01. 鈴の音色に導かれ

瀬里奈
 (瀬里奈プレイ日記第1回。出島のほうにも試しに掲載。いつもよりさらにキモめなので物好きな方だけどうぞ。)
 この世には秘境というものがあって、そこでは鈴の音が他のどこにも増してやわらかく耳に響く。晴れた夏に日には、鈴の音のような風が汗を乾かし、夕暮れ時にはうるさかった蝉の鳴き声が次第に細くなり、そして鈴の音のようにやわらかくなる。夜の空にちりばめられた星たちや涼しげな川に舞う蛍たちもまたチリリィーンという響きを湛える。この秘境では人の声も鈴の音のようなやさしい響きを帯び、見つめるまなざしもまたやわらかくこちらに触れてくる。
 ・・・そんな秘境を人は心のどこかに持っているけど、実際に存在するのはそれを真似ている作り物だからタチが悪い。現実がバラバラになってしまわないように、何かで繋ぎ止めなくてはならないのだから、それはいたって自然なことだけれども。
 瀬里奈はその秘境を呼び出し、暴き、そしてその守り手となってくれるのだろうか。


 ・・・買ってから一月以上寝かせたままにしておいた瀬里奈を、ついに始めてしまった。この名高いゲームをやってしまえば、もうこの先エロゲーではセンスオブワンダーに会うことはなくなるのではないか、そんな迷いを抱かせるだけの風格のある作品。エロゲーには信者という変な現象があるけど、KeyやType-Moonの物語ではなく、瀬里奈を自分の大切な存在とすることができるだろうか、それともやはりこれはアトリエかぐやというメーカーの一良作抜きゲーに過ぎず、過剰に期待しても拍子抜けするだけなのか、そんな不安があったし、今もある。でもやはりこの瀬里奈は別格のものとして、大事に進めていこう。

 そして第一回目でいきなりちょっとつまづく。水仙花を少し進めたあとだったので余計にはっきり目についたのだろう、アンチエイリアス処理をきちんとしてないというのだろうか、瀬里奈の立ち絵の線が、ところどころギザギザでが雑っぽいのだ。背景との調和もいまいちでややぺらぺらな感じ。この先もこのギザギザと付き合っていかなきゃならないのかよ・・・。水仙花の後にやらないように気をつけなくちゃな。

 思ったことをつらつらと。
 チヨと弥平のお年寄り使用人コンビののんびりした声に和む。若い声優さんがお年寄り役の声をやると、しっかりしたイントネーションではっきりとしゃべってしまうので変なことが多い。本当のお年寄りはもっと潰れた声で、途中に詰まったり息継ぎをしたりしながら、若い人にとっては変則的なイントネーションでしゃべるものなのに。この作品では理想的というのにはまだ程遠いけど、人がいい感じでゆっくりとしゃべるのはちょっといいかもと思った。このゲームは陵辱ルートがかなりむごたらしいらしく、僕も恐れをなしていて、しかもこの恐ろしい村で安心して信頼できそうなサブキャラが、ほとんどいなそうなことが分かって心が重くなっていたところだったので、とりあえずこの爺さん婆さんでは一息つけそうでよかったよ。
 そう、とても嫌な感じの村なのだ。誰かがレビューで書いていたけど、僕だったら瀬里奈を強引に連れてでもしてさっさと脱出してしまいたい気になる。だいたい、瀬里奈を舐め回すように無言でじろじろ見る村人たちって何だよ。おぼこかどうかなんて失礼なこと聞きやがって。エロゲーマーたちの隠喩かよ、くそっ。
 しかも僕はハッピーエンドは最後に迎えたいから、はじめは瀬里奈をひどい目にあわせるルートに進まなきゃいけないんだ。やだなぁ。ほんと迷うわ。瀬里奈スレにも攻略順のヒントとかないみたいだし、やらなきゃいけないんだろうなぁ。一番ひどいルートはやらなくてもトゥルーエンドに行けるらしいけど、ケチなんで全部読まないと気がすまないんだ。・・・・・・。・・・・・・。ごめん瀬里奈、いつか必ず助けるから。
 
 抜きゲーとしては、というよりはエロゲー全般の中でも、主人公がけっこうまともなのがうれしい。もうちょっとまじめだと最高なんだけど・・・例えば下の名前に移るのが早すぎ、心の中では初めから下の名前で呼んでるし。もうちょっと「周防さん」「高阪さん」の距離を楽しみたかったよ。まあ、あの不気味な村ではきちんとした距離を置いている余裕なんてないということで、こっちも頭を切り替えないとな。それにしても全国の直人君が羨ましい。おれも直人に改名したい。
 伝奇ものとしての設定や小道具は序盤もう大体出揃ってしまったみたいで、あまり物語に過剰な期待をしないほうが吉なんだろうけど、主人公にはせめてこの先で民俗学の薀蓄を傾けてほしいなぁ。大学三年であんまり知っててもちょっと嫉妬するが。その辺は水月神樹の館あたりに期待すべきなんだろうか。
 声優さんの演技さんについては、お母さんも雪奈もしっとりしていて好印象。
 名高い瀬里奈の声についてだけど、悠歌さんや穂乃菜のように電波的な魔力で耳に残る声ではないにしても、噂どおり緩急自在で多彩な音色を響かせていて魅了される。この先が楽しみだ。
 音楽もあまりしていなかった期待よりは上かもしれない。銀色のように自己主張が強くなくて、今のところは満足。

 そして最後に雪奈について。蛍の舞う夜空を背にした出会いの一枚絵には、しばし見とれてしまった。主人公はなんだか劣情を掻き立てられてしまったみたいだけど、僕は美しさに見とれていた。そして選択肢では、早くも訪れたルート分岐の予感にかなり逡巡。瀬里奈にあやまりつつ、この美しい雪奈にならついていっても後悔するものかと決心。まさに、馬鹿な漁師が海辺のマーメイドか、川辺のルサールカの歌声に惹かれて水の中に消えるが如しだ。その後でエッチシーンが続かなくてホッとする。そして翌朝、かわいい瀬里奈の声を聞いて心が痛む。

 今日はここまで。この先はこんなに長文は書けなくなるだろうな。今日は景気づけにがんばってみたよ。