控えめなピアノ

 サティのCDを注文した。ロジェ演奏のとバルビエ演奏4枚組の。そのうちいいイヤホンを買って外の音を遮断して聴きたい。最近通勤中などに一番かけているのは高橋アキ演奏のサティ。デ・レーウ演奏のゆっくりしたのも引っ張り出してきて聴いてみたり。最果てのイマのBGMとか聴いていたらどうにも止まらなくなった。ジムノペディの一番は改めて言う間でもないのでいいとして、ピカデリーが好き。葉子さんが可愛らしく軽やかに登場するシーンの曲。こんな曲イマをやらなかったら決して好きになることはなかったと思う。サティのに限らず、イマの日常シーンの音楽はよく行き届いていい曲が多い。ただ単に聴きやすいとか綺麗とかではなく、その空間に微妙な陰影をつけたり、テキストに呼吸の流れを与えたりしている。直接的な音というよりは何か透明な膜がうっすらと張ってあるかのようで、作品の語りの構造ともよく合っているというか。楽しみなピカデリーのほかにも、マイナーな曲の中にまだいいのがあるかもしれない。いろいろな人の演奏を聴き比べて、ついでにイマの世界を膨らませることもできるだろうか。
 サティはパンドラの夢と、あと確か蜜柑でも使われていた気がする。ちょこっと調べてみたら、日本では80年代にずいぶんと流行り、至るところで流され、ピンク映画か何かにも使われたらしい。そういえば、昔日活ロマンポルノを見て育った人が、あれは単なるセックスだけじゃなくてストーリーがあり愛があると言っていた。昔のポルノ映画は今のエロゲーと似たジャンルだったのかもしれない。ともかく、サティには多分まだいい曲がたくさんあるだろうから、いいエロゲーにはどんどん使ってほしい。あと、サティに似た路線の作曲家を他にも探しておきたい。多分いるだろ。ドビュッシーみたいに力みすぎず、静かで綺麗な曲を作っていた人が。
 最果てのイマのあの雰囲気は飽きることがない。イマよりあとにやったクロスチャンネルはあまり中毒性がない。音楽がそれほどすごくないからか、音声がついているからか、それともストーリーがすっきりしすぎていて陰がないからか、あまり惹かれない。前評判を聞きすぎたからかもしれない。ESでの得点は上にも下にも動かしにくいので(僕は得点というより偏差値の感覚でつけている)、仕方なくどちらも85点にしているけど、イマのほうがずっと好きなようだ。田中ロミオさんには、ギャグもいいけど神樹の館最果てのイマの落ち着いた雰囲気も追求していってほしい。もちろん、イマで見せた人文科学との競演も。