こんなアタシでゴメンなさい・・・ (70)

 「こんなアタシでも・・・」
 残念ながらプレイしたのがだいぶ前で、もう内容もあまり覚えていないので、そのときに書いたのを再録:

 久々に『こんなアタシでも・・・』を少し進めた。やっと一つエンディングを見れた(スタッフロールを見て、桃野コメットさんが女性で、しかもエロゲー声優でもあると知って驚いた)。相変わらず楽しいテキスト。ニコニコの「電波なエロゲー」には夢幻回廊と水仙花が入っていたのはよかったが、Wintersゲーはなかったな・・・。
 本来はモニターの中のヒロインとモニターの前に座ってクリックしているプレイヤーが同時に快楽を共有しているというのは幻想に過ぎず、それぞれ別個に快感を得ているのであり、両者は断絶している。別にエロゲーに限らず、普通のセックスであってもどこかに断絶の影はあり(標準的なエロゲーでの和姦シーンは、テキスト描写によってありえないはずのシンクロニシティを強制的に実現させている)、二人の信頼だけがそれを埋めるのかもしれなかったりするわけで、未来にキスをはその信頼をめぐる話だったとも言える。『こんなアタシでも・・・』はけっこう未スに近い位置にあるように思う。真冬は徹底的に主人公と同時に快感を得ることを避ける。どっちかが楽しんでいて、どっちかがそれを見ている。主人公にとってはそれは寝取られの受難なのだけど、今作では寝取られはストーリー的に組み立てられているわけではなく、ヒロインの性的嗜好として開き直られてしまっているので、寝取られではない。始めこそもどかしいけど、寝取られ感は途中からあまりしなくなった。自分の汚いところを見てほしい、自分が浅ましく快楽に耽るさまを見てほしい、全てを見たうえでそれでも私を好きでいてくれるなら、私は完全にあなたのもの・・・。これはヒロイン真冬の言い分だけど、どちらかというと僕のようなダメ人間が女の子に向かって言ってみたいことなのではないか。自分が変態的な嗜好を持っていることを自覚しているプレイヤーにとっては、相手の女の子もおかしな嗜好に理解があるなら心強い。隠微な世界を共有することができる。平井次郎はこの隠微なトチ狂い方のタイミングが面白い。「せっかくだから、今日ははじけちゃおっかな・・・」「はじけるって・・・!?」。・・・昼間の公園のど真ん中で主人公に立ちション飲ませといて、まだはじけていなかったんですか。

 あとはこの作品では濃く塗りこめられた背景画がなんだか狂気じみていた。


 「ゴメンなさい・・・アタシのせいで」
 こちらは背景は割と普通になった代わりに、サブヒロインの渚の立ち絵の表情がかなり狂っていた。主人公の恋愛がうまくいっていないとやたらと嬉しそうな爽やかな顔するし、うまくいっていると顔は怒っているのに台詞は喜んでるし。
 あとは当然ながらヒロインの哀沢涙もよかった。こんな変態主人公とくっついたのが運の尽きだ。笑い事じゃないんだろうけど。貧乳が残念ではあるけど、平井作品のこれまでのヒロインでは一番かわいい女の子だった。「泣く女の子」がヒロインになってしまうところがすごい。エロは薄めながらも、公園でのエッチと「贖罪」エンドはかなり興奮させられてしまった。


 「こんなアタシでゴメンなさい・・・真冬真伝」
 かなりエロかった。痴漢ものとか、こういう淫乱/貞淑のシチュエーションがどうやら好みらしい。絵は「こんなアタシでも・・・」よりはよくなっていた。
 音楽のせいで変に感動的な話になっているのがまた面白い。ラフマニノフの甘いピアノ曲みたいなのを背景に、「これからは、アツノリの硬い棒が、いつまでも私を突いてくれる・・・」とかって永遠の愛を誓われて、なんだか雰囲気にのまれてしまう。一人称がヒロインの語りなのはしつこいところもあるけど、やはり効果を上げている。スポーツ新聞のエロ小説みたいな(個人的には)下世話な記憶を持つ手法であるはずなのに、平井作品のどこかずれた世界においては、ヒロインの「内面」を表す、過剰ながらもうまい手法に思えてしまう。


 システム面やグラフィックなどで改善の余地はあるけど、三者三様に愛すべき作品たちだった・・・。