- 作者: 田中ロミオ,mebae
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
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(ちょい追記。7月19日。)
世界を回している仕組みはどう考えても間違っているけど、それを止めることはできない。自分にとって心地よいやり方で世界と関わろうとすると、表出する部分が歪なことになってしまう。そこに生きにくさをどれだけ感じるかに個人差があり、普通に暮らそうとすること自体が面倒な「戦い」のような人間にとっては、普通にしていること自体が面倒なこと。生きることは傷跡を残すことであり、人生の濃密な瞬間というのは深い傷が刻まれた瞬間。それが後々思い出して不快なものとならないために人間らしいマナーの文化があるけど、アンチ・オイディプスを引くまでもなくそこから漏れてしまう傷は無数にあり、不愉快な痛みをいつまでも残す。一人で生きていかないのならば、その痛みを別のものに転換することを許してくれる相手が必要になる。「沙宮夜、どこにいる?俺は前世で亜羅侘だった者だ。菩提樹の根元にて待つ。17歳・男」。このブログ自体が菩提樹の根元だし。痛い自分のことや突き放して傷つけてしまった家族や友人のこと、その度に軽薄になっていった自分のこと。世界は結局、傷と傷を擦り合わせてへらへらしながら回していかざるを得ない気持ち悪いものなのか。がんばって屋上で机を積み上げてみても、ヘンリー・ガーターのような怪物にしかなれないのか。まあそれでも止まるわけにはいかないからね。どうせやるなら全力でやれば、何か救われるものがあるかもしれない。宗教のない世界で救われるための試み、というのがこの作品の意義だろうか。