まだ期待は捨てない

 見るつもりはなかったけどやはり見てきてしまったエヴァ。そして予想通りあまり楽しめなかった。満足したのは12:20くらいに終わっても終電に間に合ったことくらい、というのはさすがに言いすぎだが、この映画を見ても昔のように熱に浮かされることはない。MAD的な演出のロボットアクションと轟音のてんこ盛りで頭が疲れた。製作者が作りたいものと僕が見たいものがけっこうずれているのかもしれないと思った。綾波の女の子らしいカットが増えたのは、昔その手のSSを読み漁っていた自分には嬉しいはずなのに、安心感や既視感はあってもぜんぜんドキドキしないし緊張感もなかった。声はなんだか高すぎるような気がするし、早口だし、それにあの筆跡にも理不尽な不満を覚えてしまう。だってあれが綾波の字でいいのだろうか。普通過ぎないだろうか。綾波なら筆跡だけで不思議な印象を与えてくれるはずではなかろうか。それだけに限らず、昔はエヴァは演出の切れ味と生々しさが魅力だったのに、今回の映画ではその辺がなくなったり既視感に置き換えられたりしている。もうエヴァで衝撃を受けたり魂を持っていかれたりすることはないという可能性は、喪失感が大きすぎるので受け入れたくない。時は流れたけど、まだエヴァの代わりは見つかっていないのだ。この劇場版ではたぶん熱狂的な感染力を持った批評や言説も出ないだろう。だからこそ次の天才が現れるまでの間、「自分だけのエヴァ」を大切にしなければいけないのだろう。現れなくても足りるくらいのものをかつてエヴァにはもらったはずなんだけど。結局、なんだかよく分からないまま買ってきたシャーペンとコースターだけが残った。後ろ向きな感想だけど、エヴァなんだし素直でありたい。