彼女たちの流儀 (70)

目で見てそのテーマを感じると言う意味においてグラフィックありきの作品。別にものすごく絵が神がかっているとかいう訳ではないけど、「美しいものを見せられた」感があって、見るゲームだった。

 若干湿り気はあるけど自分の道を選んでまっすぐ進んでいこうとする若い子たちの物語と、繊細でやや耽美的な画風(髪とか服とかポーズとか表情とか)できれいな人形のように描かれたデザインが組み合わさると、ボリューム的にはあっさりした作品であっても、刹那的な美しさを感じることができていい。解放感のある(走馬灯か昇天を思わせる、というと怒られるかもしれないが)エンディングもよい。

 主人公の胡太郎は嫌味のないさっぱりした性格だし、他のキャラもみんな抑制がきいた話せば分かるような同年代感のある仲間たち。そして過度に朴念仁や粗野を装うでもなく、自然体の美しさと若さの特権に恵まれている。だからこそ何かに本気になったり思いを伝えたりしたなら、そこには刹那的な焦燥感のようなものが感じられてしまうのだろう。過度な耽美や押し付けがましいロックンロールは重苦しくてめんどくさいが、若い頃には何かに本気になれば自然に刹那的なニュアンスが出てしまうような時期があるのだろう。少なくとも物語の中では。それを象徴するもののひとつが女装した胡太郎が見せる美しさなのだろう。涼月は人形に見とれるが、全ての登場人物が実は人形のように美しい。それは永遠でないと分かっているけど永遠であるような美しさだ。作中で美しいと評されているキャラはいるけど、それを本当に感じ取れるのはプレイヤーだけだ。

 プレイ途中に書いた感想は涼月だけだけどこちら。あらためて読んでみると、何を言っているのかもはや自分にもよく分からないところがある。もう少し詳しく書いていればよかったかも。やっていてテンションが上がったのは涼月ルートだったけど、他のヒロインたちもみんないい子たちばかりだった。特に感想を書けなかったのは惜しいけど、懐かしくなったら絵でも見て思い出せばいいのがエロゲーのよいところ。