then-d編『恋愛ゲーム総合論集』とか

 きちんと調べていれば面白いものがたくさん見つけられたのだろうけど、今回も行き当たりばったりでちょっと見て汗だくになってすぐに帰ってきた。ライアーのAkiraさんのサークルがなかったのが残念だった。でもソフマップ特典のリリィのタオルを広げていたサークルもあったようだし、けっこうスチームパンクシリーズの同人誌ってあるのかもしれない。いずれにせよ、コミケではいつも過度に人見知りになって、話したり立ち読みしたりということはほとんどできなくなるので(仕事なら割り切れるので初対面でも話しやすい)、行って帰ってきただけでも一仕事だった。毎回思うのだが、オタクカルチャーという狭い世界の中なのに(少なくとも僕が見ている世界は小規模だし静か)、自分と嗜好が違う人たちがこれほど大量に集まって蠢いているさまはなんだか不気味でさえある。趣味という感情的になりやすい対象を通じてこそ生物多様性の実感が強く得られる。僕も有象無象のクリーチャーの一種。

  • 天野拙幾『恋も仕事も真っ直ぐ一途に!』:シャルノスのメアリの表紙が目に付いて買わせてもらった。男性のほうはMかと思って帰ってから読んだらザックだった。こんなふうに唐突なカップリングに驚かされるのにもいい加減に慣れなければならないが・・・。しかしメアリはやはり可愛い。
  • NH3『What a Wonderful ERO-Game!!』:猫撫以外はやったことのない作品ばかりなのでよくわからなかった。キサラギGOLD★STARなどへの熱い思いが書かれており、永倉さんもうぃんぐさんも未プレイ者にはほとんど意味が分からないスタイルの書き手だけど、のめりこみっぷりは楽しそう(特にキサラギGOLD★STAR)。猫撫に関しては、変わらないことにも驚きと喜びを見出せると言うのがなるほどと思った。でももっと書いてほしかった。あと表紙のデザインは見事だった。
  • then-d編『恋愛ゲーム総合論集』:猫撫に関しては、元長柾木氏のガチなファンサイトをやっておられるlitfさんのテクストが思い入れたっぷりでよかった。柚のことは僕は書けなかったし、柚以外でもこれからもどんどん書いていただければ。今回だけではまだ書き足りないのでは。haltarfさんのテクストは、もしゲームに出演していたら、おそらく影絵の立ち絵として表示されていたであろう冷淡な小文。元長作品の特徴の一面を淡白に指摘しており、巧まずして僕やlitfさんの肯定的な文章と釣り合ってしまっていた。他には、then-dさんのセカンドノベルとノルウェイの森との比較考察がよい電波を飛ばしていた。自分も含めて今回の論集にはおとなしめの論考が多かったので特に。『夏めろ』は性欲と倒錯の描写がよいというのは前から聞いていたけど、僕がプレイしたときにはあまり強くは感じなかった。おそらく注意が散漫だったのだろう。紅茶の人さんが指摘する郊外というトポスに関しては、僕はプレイ時には郊外というよりは田舎のばあちゃんち的な感覚だった。郊外は自分にとっては日常の空間であり、あのようなファンタジー(祭りや女の子)が起こるのは田舎というトポスのほうがふさわしいと思っていたからだと思う。郊外という意識を持っていつか再プレイしてみたら別の風景が見えてくるかもしれない。他の方の論考は作品をプレイする機会があれば改めてみて見たいが、今は特にコメントできず。自分の文章に関しては、ゴールデンウィークに一気呵成に思いつきで書いたものだったのにも関わらず、今読んでも自分にとってはまだ死んでいないように思えて嬉しい。そして個人的にさらに嬉しいのが、表紙と中の猫撫のイラストだ。表紙のぴざぬこさんの絵は、前景のギズモと琴子のツートップの顔を結ぶ線と平行する形で、結衣のふともも・柚のふともも・式子さんの気遣わしげな顔を結ぶ線が並んでおり、また、各ヒロインの視線もうまくばらけていて、動きがあって面白い。高林健さんによる特集ページ中の琴子も、線や影に味があっていい。足を突っ張って立っている琴子ではなく、くつろいでいる琴子もきれいに見える。ホフスタッターという人は聞いたことがなかったけど、なにやら面白そうな本を書いているようだ。今日はthen-dさんに一冊頂いただけで帰ってきてしまったが、次のコミケでまだ在庫があればもう一冊は買っておきたい。/それから、最後になりましたがthen-dさんどうもありがとうございました。編集の確認連絡がとても丁寧だったので、一人ひとりにこんなに丁寧に応対して大丈夫だろうかとひそかに思っていたのですが、やはりけっこうご無理もなさっていたようで申し訳なく思います。とはいえthen-dさんでないと出ないような論集でもあるので、少しお休みになって、また復活されるのを楽しみにしております。