夏の終わり=暴力

 今年の夏は有給を取って合計で1週間以上休みがあった。休みがあった。休みがあった・・・。あったけど、食っちゃ寝したり同窓会的な集まりに顔を出したりしているうちに終わってしまった。家で消化しておこうと思った仕事の宿題もあまり手がついておらず、追いつめられた感覚とともに嫌なプレッシャーになってきた。せめてコミケで買ったものの感想でも少し書いておく。今回のコミケは会場にいたのが30〜40分で風情も何もあったもんじゃなかったが、それでも良い買い物を出来た。

  • 希『星継駅擾乱譚外伝・雨ヶ森去来抄』:これが500円で小部数発行というのは納得しかねる満足度の高さ。ゲーム本編のほうもおそらく1000本にも達してないのではという慎ましい売れ行きのようで、スチームパンクシリーズで稼いだ資金を回してもらえればいいのだけれど、とレイルソフトのこの先について余計な心配をしたくなる。スチパンの方にはきっちりと6500円のお布施をして薔薇の魔女のバッグをもらい、まだ聴いても開封もしていない、だめなコレクターになってしまった。大機関ボックスもやってないし。そういえばこちらの次回作はフランスとか。世紀末の本場だけど、1900年代にはもう次の時代になってたんだっけ。1910年代なら、バレエ・リュスが来たりもするか。それはともかく、雨ヶ森去来抄。小僧がごろごろしたり、起き上がったり、ふてくされたり、酒を飲んだり、魚を釣ったり、走り出したりといろいろなことをするのをひたすら見ている、徳利小僧観察日記とでもいうか。どさくさにまぎれて本編の誰かさんが無駄に変態性を発揮していたり、誰かさんがまたもや幻惑的な美しさでふっと現れては消えたりするけど、中心となるのは徳利小僧と雨降る森の不思議な話。相変わらずの贅沢な筆致で、見ているだけで飽きることがない。もちろんゲームをやったあとだからこそ楽しめるという部分はあるのだろうけど、それにしてもゲームと小説で余韻の質があまり変わらないというのはエロゲーとしては稀有なことだ。
  • NH3『ぼくらのあいした美空島』:こんな同人誌を作れたら思い残すところは無しとしてもいいのではなかろうか、というお手本のような。在庫の最後の一部だったそうで、面倒くさがらずにコミケに顔を出してみて良かった。永倉さんとうぃんぐさん、どちらも作品との距離のとり方も思い入れの表し方もとてもうまくていつものことながら感心する。島のことについては、僕が自分の感想で回想した瀬戸内海の島は小豆島ではなく、そのことひとつとっても無茶な作品感想だと思うが、だからといって僕が小豆島に聖地巡礼的なことを今更したからといって良い結果になるとはあまり思えず、この冊子のようにふさわしい人がよい仕事をしてそのおすそ分けに与れるのはありがたい。
  • NH3『Oracion』、then-d『はつゆきさくら論』:はつゆきさくらに関して僕はシロクマ編の感想(とSS)しか書いてないのだけど、それはこの作品が突っ込みどころの多い出来で、所々読みながら脱力せざるを得なかった中、シロクマだけはキャラ属性と声優(涼屋スイさん)の演技の吸引力で乗り切れた気がしたからだった。全体として、言葉やストーリーテリングにキレがあるところとダメダメなところの波が激しくて、そうしたすべてを冬から春へ移る季節の感傷で覆い包んでいるのが印象的といえば印象的だ。2冊の同人誌では作品の「語られなかった余白」を意識させるような考察が参考になった(僕はインタビューとかVFBとか読んでないし本編も漫然とプレイしただけなのでそもそも理解が浅いということもある)。特に永倉さんのを読むとなんだかはつゆきさくらがトノイケダイスケ作品のような錯覚さえしてきた。そういう読みを誘発する作品だというのには同意できる。
  • NH3『Tokology』:手に入るとは期待していなかったワンコとリリー本。この作品でこれだけ愛情のこもった本が出て、それを読むことが出来たのはありがたいことだ。この本を前にすると自分の書いた感想がいかに歪なものであるかが明白で恥ずかしいが、死んでも直らない自分の愚かさを恥じるよりは良い本との巡り会わせを喜びたいもの。
  • sunagi『Node of Farthest 2.0』:未完成版とは言われながらも完成度の高いイマSSだった。この濃さで500ページ分くらい読みたい(無理な注文)。イマを再プレイできるようになるのはいつのことか。

 あとは本当にだらだらしていた夏休みだった。ジャッキー・チェンのカンフー動画を見たり、桃井はるこメドレーを聴いたり、北斗の拳やら人類は衰退しましたやらの動画を見たり、カレー作りに例のごとく失敗してグロいものを無理に食べたり、他には何をやってたっけ・・・。友達の「黄土色の人形」が欲しくて初対面の男と初キスをしてしまう奥手な女の子とかか・・・(Kiss x 500)。
 それから、島の叔父がこちらに出てきていると今しがた電話があった。今年の僕の夏はもう終わってしまうけど、いつかの夏のためにも来週くらいに一度会いにいこうと思った。