蝦沼ミナミ/みさくらなんこつ『朝からずっしりミルクポット』

朝からずっしりミルクポット (ぷちぱら文庫 9)

朝からずっしりミルクポット (ぷちぱら文庫 9)

 一日に何度か出してあげないとすぐに一升瓶のような大きさになってしまうという恐ろしい事態で、これはもはや障害者の認定を受けても仕方がないレベル。『フランケンシュタイン』のような顕在化した無意識の文学であり、『ねじ式』のような不条理文学であり、『地下室の手記』をさらに押し進めて、収奪された身体性に復讐される寓話文学であるはずだが、あくまで祐希堂伊織の「日常」と言い張るのがシュール。エロゲーではなくお手軽な文庫本というフォーマットになっても狂騒的な笑いと病的な吸引力は失われず、冷静になると何でこんなものを読んでしまったのかという因果なもの感はむしろ強まったような気がする。これが何かの生理的な経済に駆動された構造物であることは多分間違いないのだが、自分の中で何処に位置づけたらいいのかにわかに決められず、まさに「腫れ物」扱いだ。
 本作はオリジナルからスピンアウトした「日常」物だが、オリジナルよりもバッドエンド感が強い。柚子とささやかな幸せを手に入れることも不可能ではなかったはずだが(あれほどのふたなりなら普通は不可能だが、というか普通のふたなりというのもないが)、破滅に向かって進まざるを得ないのは悲しいものがある。伊織ちゃんに幸せと平穏を与えてください。

日記

 職場のチームの先輩が立て続けに辞めて、ついに残ったのが僕と後輩の女の子だけになってしまった。まじめでおとなしくて小さい子なのだが、声が北都南によく似ていて癒される。顔を上げずに声だけ聞いていたらエロゲーをオートモードでやっているのと変わらない。最近は明らかにいわゆるブラック企業と言われるペースのオーバーワークが続いていて、後輩は11時半まで、僕は12時半まで、それぞれ終電の時間まで二人で残ることが多く、セクハラをしないか心配。と思っていたらしてしまった。「ついに二人になってしまった。僕と君の二人だけでつくっていくしかないからよろしくお願いします」とかキモいことを言ってしまった。まあこの子もいずれ過労で辞めてしまうだろうから(新婚さんなのに残業ばかりで旦那が心配してる)、じきに僕が1人で回さないといけなくなるかも知れず、そうなったら外注をさらに増やすことになる。なんとかリアル北都南の声に紳士的に癒されながら続けていければいいのだけど、無理だろうなあ。