ONE.体験版の感想をぐだぐだと

 ONE.の体験版をやってみた。
 懐かしかった。

 はじめの方はなんか一文一文かみしめて読んでしまった。テクストは原作とほぼ同じのように感じたけど、途中から見慣れない文章も出てきた気がする。僕が忘れていただけかもしれない。

 「リファイン」というのがどういうものか不安があったけど、18禁でないだけで基本的には原作そのままのストーリーということのようだ。僕がそれを望んでいたかと言われれば答えようがなく、リファインが製作されたという事実を所与のものとして受け入れるしかないのだろう。それにしても店舗特典はどうにかならないものか。確かにエロゲーだけど、これはファンが望んでいるものなのだろうか。とらのあなのアクリルプレートが一番ましかもしれないけど、あえてほしいというほどでもない。

 テクスト以外は確かに今風のきれいなものにリファインされているようだ。音楽は原作の質感を十分に想起させつつ、音色がうるさくない程度にゴージャスになっている。絵については、全体的に今風に明るくなっている。あと、横長の画面になったからか、主人公の家とか空間がいろいろと広く感じる。一枚絵もだいたい原作と同じで懐かしかった。登校時の走る長森の絵とか、授業中のノートの絵とか、あったなあと。七瀬登場シーンの転んでいる有名な絵はさすがに変わっていて少し残念。肝心のキャラの絵は、どう判断していいのか難しいところだが、何かの評価を下すことはできない。原作の絵があまりに印象に残っているからだ。リファインではヒロインたちがみんな、顔がふっくらしてしまった。原作の長森の立ち絵はエロゲー最高峰の一つといえるほどよいのだが(表情がゆっくりかわるのとかもよい)、リファインの長森も別に悪いわけじゃない。優しい感じがあって、ゆっくりとふわふわ揺れるようなエフェクトがあって(このエフェクトについては、特に茜のキャラによく合っていると思う)。季節は11~12月。あまり意識していなかったけど、静かな秋の陽光のやわらかい日差しが長森の茶色っぽい髪や目や、赤・茶系統の服の色をにじませるのがよいのかもしれない。他のヒロインたちもみな秋の陽ざしを受けてか少し柔らかく発光しているようで、この色彩の感触は確かクラナドをプレイした時にも感じたことを思い出した(あっちは春だが)。

 モノローグのシーンは丁寧に作られているけど、女の子の字のようなフォントだけは好きになれない。これは重要なシーンだからもう少し配慮が欲しかったかな。水平線と海についてのテクストが何か所か見覚えない気がしたけど、ちょっと変わったのかな。

あとは声だ。僕がプレイしたONEは声なしだったが、声のあるリファインはやはり感触が大きく変わる。どのヒロイン(といっても繭と澪は未見)もあまり癖が強くない声で助かるが、このまま聞き続けて僕のプレイ体験が書き換えられてしまうが少し惜しい気もする。クリアした後では、もう原作を読み返してもこのリファインの声が頭の中で聞こえるようになるのだろうか。思い切って声を切ってプレイしてみるのもありだろうか。特にみさおの話はやっぱり声なしで、真っ白な画面を見て音楽だけ聴きながら読むしか正解はない気がする(それではリファインの意味がないが)。

 この作品をプレイして何か自分は得られるのだろうか。エヴァの新劇場版が始まった時にはまた何かすごい体験をできるのかもという期待も少しあったが、これはそういう企画ではない。原作をプレイしていた時間、2004~05年頃の自分に帰れるわけでもない。中途半端な気持ちでプレイし終えても、あれから20年近い時間が経ち、今の自分はここにいるという事実が身に染みるだけかもしれない。それに対して「永遠は、あるよ」と答えるのがこの作品なのだが、それでいいのか…… 仮にあまりよいプレイ体験とはならなかった場合、口直しに久々に原作を読み返し、やっぱりこっちがいいよ、と頷ければそれでいいのか…… あるいは、製作者たちの思いとか、他のファンの人たちの熱い語りとかを聞けばいいのだろうか、いや、そういうわけではない。16bitセンセーションとかけっこう楽しく見ているせいか、歳をとったせいか、考えが横道にそれていき、われながら面倒くさい。まだ発売まで時間があるから考えをまとめなくともいいんだけど、このまま放っておくと買わずにスルーして、後から少し後悔するかもしれないな。