いびつな文章(『青い涙』と『さくらむすび』)

 自分のことは棚に上げて。秋山瑞人の後ということもあって、エロゲーをやってもテキストで引っかかってしまい、なかなかのめりこめない。

  • 『青い涙』。ESでは「隠れた名作」評価で、ライターが韓国人の人ということで、ちょっと癖のある変わった文章を読めるかもと思っていたところ、ふたを開けてみると、単に書き慣れていない感じのいまいちな文章。外国語臭さは語彙のセンスにもろに反映されていて、特に比喩とギャグがすべり気味。日本語ばなれしているといえなくもないけど、そのことが特に良い方向に作用しているわけではない。OPムービーは何気に良い。メインヒロインのマナの立ち絵は浮世離れした感じが出ててけっこういい。背景画がかなりファンタスティックで、北欧かニュージーランドあたりの海辺っぽいのに、キャラの名前は思いっきり日本名だったり納豆を食ってたりして、壊れ気味。どうやら意図的なものらしい。テキストに脱力して中座したけど、そのうち再開予定。
  • さくらむすび』。音楽がいい(らしい)ゲーム、そして文章にも期待できそうなゲーム(有名な『水月』の人らしいし)ということでやろうとしたけど、起動の際にディスクが必要ということで挫折。思わず『青い涙』をインストールしてしまったけど、いまいちだったので結局手を出してしまった。DVDドライブのついてるマシンは日本語じゃなかったので、今まではそっちでディスクの中身をUSBメモリに移してから、日本語マシンにコピーしてディスクレスでプレイ、という面倒なことをやっていた。最近はほとんど日本語マシンしか使ってなかったし、エロゲーのせいで容量がきつくなってたので、これを機にDVDドライブのもの日本語OSに入れ替えることにした。XPは無理らしいマシンなので、仕方なく98SEに。OSのインストールは余り慣れていない上に、いろいろとドライバもインストールしなけりゃならなくてかなり手こずった。どこかを間違えたせいでネット接続はできないまま。エロゲー用なので問題はないけど。おかげで積んでた『行殺☆新撰組』もできるようになってしまった。DVDのゲームもこれからは気にせずにプレイできることに。肝心の『さくらむすび』は、今のところ期待を下回っている。ややクラシック調な音楽は、種類が少なくて緩急に乏しく、サティのピアノ曲とかをうまく使っていた最果てのイマには及ばなそうだ。そして何より痛いのは、ヒロインたちとの交流に割かれたテクストが異常に部厚いのはいいんだけど、あまり面白くないのだ。みんなお互いに気を回しすぎ、思いやりの言葉を口にし過ぎでしつこいくらい。セリフに機知が乏しく、各人の立ち位置以外のキャラ立ち・キャラの個性が弱い気がする。狭い仲間内の輪の中で同じ話を何度も循環させるので読むのに疲れる。月森さんが書いているとおり。特に、男キャラたちが主人公のいちゃつきを応援するときとか、鈍い思いやりが生温かくて気持ち悪い。好きな料理を大量に作ったんだけど、バランスを間違えて失敗して、いまいちな味のを腹に押し込んでいく――そんな感じのする大ボリュームテキストだけど、テキストのこの微妙にありがたくないボリューム感は、絵の不足感からもくる。やらしいニュアンスはないけどヒロインが主人公にべたべたとしがみついたり膝枕したりというような、スキンシップの場面がかなり多いのにも関わらず、ことごとくテキストだけで済ませられ、しかも特に工夫のある面白いテキストでもない。ただ、このボリューム感はHシーンではかなり良い。淫語とかセクハラくさい描写を一切使わずに、じれったいほどに長い前戯とか仲のよさそうなHを描く作品は少ないと思う。あまりエロくないけど。しかし全体としては鈍くていまいちなゲームだ。『つよきす』の正反対なんだろうか。たいした事件も起こらないストーリーなんだから、せめてテキストは刺激が強いか、あるいは甘美で音楽的なものにしてほしい。甘さは言葉の内容だけではなく、形式でも表現されるものだから。鈍い言葉でみんな描かれてしまうので、緊迫感や行間というものがほとんどない、息苦しいというか頭に粘土を詰められたような感じがする。相手を思いやっているようでいて、「ああそれ分かる分かる」と理解を示しあう、酔った知人以上友達未満同士のように、相手と衝突するほどには斬り込むことができない。この鈍いコミュニケーションに対して無自覚で、その中心にいる主人公には、あまり感情移入できず、主人公の名前変更という声無しゲームでは特に嬉しい機能がついているのにも関わらず、僕がヒロインとイチャイチャしているような気があまりしない。立ち絵が繊細なのでフォローはできるけど、そのバリエーションは少ない。頭の速さでは一番マシそうな可憐のシナリオが一番面白くなるだろうか。キャラ描写はみんなとりあえず分厚いので、存在感には不足はない。現に今進めている紅葉シナリオでは、ルックスの第一印象からは予想できなかったほどに萌えてしまっている。