物語の中へ(神樹の館雑記)

 本当はこんなにエロゲーばかりやっているのはまずいんだけど、それでも神樹の館。音が鳴らなかったりパッチが壊れていたりして、インストールでかなり手こずったけど、別のマシンで試してみて何とか解決。
 擬古文で始まる前口上がライター氏の懐の深さを見せていてうれしい。前に体験版をやったときにも充分分かったけど、田中ロミオ氏はよく調べてるとかいうようなレベルではなくて、余裕たっぷりに知識と言葉を尽くして語りを編んでいっていってくれる作家さん。今作では学究肌の主人公を得て、のびのびと落ち着いた調子で物語を紡ぐ。今日はESのComPalさんの感想などを読みながらも思ったけど、きちんとした日本語は読んでいて気持ちがいい。人に読ませることを考えてない僕の文章など引き合いに出すのも恐ろしいけど、でも、意識して添削していかないと上手くなることもないんだろうなあ。と、ここで一つ思い出したけど、神樹の館ではテキストはもちろんいいんだけど、テキスト表示量が多すぎてちょっともったいないところがあった。最果てのイマでもあった、テキストがリズミカルな七五調になっていくところでは、もっと表示を小出しにしたほうが演出的によくなったと思う。せっかくのテキストなんだからもっと生かせばいいのに。それとも芝居ががり過ぎるのでダメという意向なんだろうか。
 ともあれ、主人公の性格などの設定に親近感が持てる。もちろんあれほど誇張された性格の人が実際にいるとしたら、それはむしろ真面目さよりは、知的硬派を装うことに満足を見出してしまうような幼さによるものだろう。でも物語の主人公なのだからあれでよい。これで紫織や麻子のような、きちんと話せる、胸の大きな女の子たちのそばで研究に励めるのだから、幸せなやつだ工月秋成。
 シナリオはまた別の話。麻子ルートを進めていて順当にバッドエンドにたどり着いてしまったけど、麻子の抱える問題(「自分が自分じゃないみたい」)の切実さについては、いまいち伝わってこなかった。この先物語が進めばその辺は膨らませられていくのだろうけど、このままではかなり陳腐な気がする。
 絵はまあそれなり。デザインの弱さをおっぱいの大きさでごまかしている感あり。でも麻子HのCGはよかった。テキストも、扇情的な喘ぎとかは少ないけど、手抜きがなくてよかった。
 ともあれ、これはもう物語(とついでにエロ)を堪能していくのみです。