- 作者: 原田宇陀児,津路参汰,大槻ケンヂ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/05/24
- メディア: 文庫
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大槻ケンヂの原作を読んだの滝本竜彦つながりで、だいぶ前だったのでもう話はほとんど覚えていない。面白かったけど、事前に高評価を聞きすぎていたし、バンドやってる人と引きこもりじゃベクトルが正反対だし、読むタイミングも間違えたらしく、やっぱひとつ上の世代の話だなと思った。
だからさしたる思い入れもなく、今回も特別読み返したりはしなかったところ、何だかけっこう話が続いていたらしい。前作の過去を背負っている登場人物二人のことをまったく覚えていないまま本作だけで見ても、特によく書けているようには思えなかった。
話は中盤のオルガンのあたりまでが面白かった。謎を解きだすとどうにも落ち着いていってしまう。しかしオルガンはよかった。作者は怖いもの知らずらしく、ラノベらしからぬ息の長い描写をがんばっていて、笑えたし読まされた。
あとは変な力みや小技の数々。ほとんどはツボがずれているのに懲りずに仕込んでくる頑固さは、なにやら認めざるを得ない気にされてしまいそう。フョードル・ミハイロヴィチのエピグラフみたいに、中にはローカルヒットしたものもあったけど、基本的には、人に読まれることをあまり考えていない文章に見える。助詞の使い方、硬い言葉の選び方、センテンスの重ね方、例の引き方、会話のテンポ・・・いろんなところで物書きとしての育ちの悪さがうかがえ(ホワイトアルバムでは特に何も気づかなかったな)、最初のうちはこれは作品のテーマを反映して語り手の鬱屈を表す演出なのかもと思いながら読んでいたけど、けっこうそれが素っぽかった。それも含めて演出なのかね。(新興)宗教の悲しいところは、まだ馴致されていない言葉たちのみっともない響きを、否が応でも受け入れさせられることだから。そんな悔しい言葉たちの世界で、これほど可愛い表情と不本意にエッチな体を持つ女の子ががんばってみて、でも何だかダメだったりしてその余韻が残るのが、本作の魅力というか萌えどころだった。暗い話だし。