ファウスト (60)


 20世紀初めのイギリスが舞台で、主人公は民俗学者の卵・・・・・・設定とかはそれなりにいいんだけど、タイトルほどインパクトのある物語でもヒロインたちでもなかった。



(かなりネタバレ)
 ファウストが脇役で、しかもメフィストフェレスのほうがファウストっぽいけど、これはフィーが本当のファウストなのだということだろうか。それで悪魔はいないと。メタファーが弛緩して曖昧になっている。メフィストフェレスあってのファウストかと思ってたけど、それは偏った見方だったかな。
 文学作品へのアリュージョンがあるだけあって、テキストはけっこうしっかりしている。ヒロインたちがしっとり落ち着いている。ただしエロゲー的な叙情の畳み掛けみたいなのがなく、小さくまとまり過ぎていてインパクトがない。絵本も抽象的で面白みに欠ける。いつもの如く戦闘描写は、文章で表現できることなんてたかが知れているのに、何であんなに引っ張ったのか謎。ジョジョの第1部を不器用に文章化したみたいな感じ。「その瞬間、見下ろす満月よりも速く、二つの影は動いた」みたいな面白いフレーズもあったけど。
 ヒロインは実質一人。その分HシーンではCGの出し惜しみがなくてよかったけど(サブヒロインたちのHはかなりコンパクト)、顔の表情があまり生きてないのが惜しい。構図とかはいいんだけど。声無しだけど、500円で買ってサントラ付き、カレンダー(2002年)付きなので、充分楽しませてもらいました。
 丸顔なので、フィーの抱えていた時間や思いの重みはあまり感じられなかった。というか、全体的に、どちらかというと硬派な文章と柔らかめの絵は噛み合っていなかった。主題歌もなんだか場違いなような。そんないまいちな作品だけど、とりあえず、長い人生をひっそりと歩み、最後にエドと出会ったフィーに思いを馳せる。