ダメの黄昏(天使のいない12月雑感)

 やる気なさそうな(手抜きという意味ではなく、キャラの気の抜けた表情とかが)パッケージなんで後回しにしていた天いなを始めてみた。


 これが心地よいと感じるっていうのは腐った人間なんだろうな・・・。馬鹿で憐れな栗原透子。なんでいじめられるのか分かっているいじめられっこ。萌えるはずの仕草に対しても美しさではなく憐れみを感じてしまう。居場所がなくて「暇つぶしに」透子をいじめる主人公も馬鹿。しかも視野は狭く、無気力。こんな主人公を妄想で補完して依存するしかないほどに、透子には他に何もない、馬鹿。なけなしの身体を差し出しても、認めてもらえない。ほとんど。そんな馬鹿二人を見て慰めれる私も憐れ。
 このゲームは脱力して浸れるのがいい。脱力させるような空っぽな内容ということではない。よくあるように、半ば無理やりテンションを上げてヒロインを感情移入したり、いとおしんだりする必要がないのだ。感情移入する必要がないというわけじゃない。オレはダメ人間だけど、コイツもダメ人間、くっついてもいいかもしれないけど、くっつかなくてもいい、めんどくさいし。自分のダメなところ、自分のつまらなさが見えてしまうのも嫌だし。このマイナスオーラを多かれ少なかれどのヒロインもまとっている気がする。まとっているというよりは、主人公の出すオーラをはねつけないだけかも。現実でこんなオーラ出してたら、誰ともぶつからずに何も起こらない人生を送るか、あるいは怖くて人と接することができなくなるかどっちかだろう。明日菜みたいにきちがいじみた馴れ馴れしさでごまかす人も少しはいるだろうか・・・。ところがこの作品ときたら。柔らかい音楽で包み込んじゃってるし!なんか話が続いてくし!・・・ヒロインの皆さん、すまんです、こんな世界に巻き込んじゃって、という感じだ。
 実質的には初めてのリーフのゲーム。これまでは二昔前のゲームだったり、子供騙しだったりしたから。かなりよい。システムは至れり尽くせりだし、演出も適切(テキスト表示の切り替え、音楽の使い方、話のテンポ、キャラとの自然な距離)。この先で待つはずの息苦しくて面倒でヒロインのいる世界に、入って行きたいような、行きたくないような。この作品みたいな気分の小説やマンガは、それこそ腐るほど今まで書かれてきただろうか。でもエロゲーであることによって、それともリーフの作品であることによってか、とても素直に僕の中に入り込んでくる。これを恐ろしいとは思わず、素直に受け入れてみよう。
 このまま行けば自分の中に陵辱属性を少し開発できそうだ。しかし、とりあえず今しばらくは、この黄昏の世界の中に。僕には絶望したりキレたりする気概もないだろう。このまま受動的に物語に振り回されちゃうんだろうか。