変態と断絶から(東雲真冬雑感)

 久々に『こんなアタシでも・・・』を少し進めた。やっと一つエンディングを見れた(スタッフロールを見て、桃野コメットさんが女性で、しかもエロゲー声優でもあると知って驚いた)。相変わらず楽しいテキスト。ニコニコの「電波なエロゲー」には夢幻回廊と水仙花が入っていたのはよかったが、Wintersゲーはなかったな・・・。
 本来はモニターの中のヒロインとモニターの前に座ってクリックしているプレイヤーが同時に快楽を共有しているというのは幻想に過ぎず、それぞれ別個に快感を得ているのであり、両者は断絶している。別にエロゲーに限らず、普通のセックスであってもどこかに断絶の影はあり(標準的なエロゲーでの和姦シーンは、テキスト描写によってありえないはずのシンクロニシティを強制的に実現させている)、二人の信頼だけがそれを埋めるのかもしれなかったりするわけで、未来にキスをはその信頼をめぐる話だったとも言える。『こんなアタシでも・・・』はけっこう未スに近い位置にあるように思う。真冬は徹底的に主人公と同時に快感を得ることを避ける。どっちかが楽しんでいて、どっちかがそれを見ている。主人公にとってはそれは寝取られの受難なのだけど、今作では寝取られはストーリー的に組み立てられているわけではなく、ヒロインの性的嗜好として開き直られてしまっているので、寝取られではない。始めこそもどかしいけど、寝取られ感は途中からあまりしなくなった。自分の汚いところを見てほしい、自分が浅ましく快楽に耽るさまを見てほしい、全てを見たうえでそれでも私を好きでいてくれるなら、私は完全にあなたのもの・・・。これはヒロイン真冬の言い分だけど、どちらかというと僕のようなダメ人間が女の子に向かって言ってみたいことなのではないか。自分が変態的な嗜好を持っていることを自覚しているプレイヤーにとっては、相手の女の子もおかしな嗜好に理解があるなら心強い。隠微な世界を共有することができる。平井次郎はこの隠微なトチ狂い方のタイミングが面白い。「せっかくだから、今日ははじけちゃおっかな・・・」「はじけるって・・・!?」。昼間の公園のど真ん中で主人公に立ちション飲ませといて、まだはじけていなかったんですか。