ヤミと帽子と本の旅人 (70)


 歪みを抱えた少女が、一人で一生懸命作った世界を共有するのが好き。綺麗なところだけを見せて、自分でも精一杯楽しんでいて明るい。物語を終わらせろなんてForestみたいなきついなことは言わない、静的な世界。
 絵が綺麗なのは改めていうまでもないけど、特に藤姫の絵にはちょっと息を呑んだ。たいしたものです。ちびりリスたちの絵も行き届いていて嬉しい。シックな背景画にしろ、可愛い効果音にしろ、いろいろと行き届いていて心地よい。声優さんの演技もよかった。がなり立て系のヒロインなのに、うまく耳に優しい音を出していた感じ。イメージサントラも丁寧に作られていて、逃避してしまいたくなる。「ヤミ語」については、摩擦音(shとかtsとか)が多くて流音(l,m,n,r)が少し足りない気がするけどそのうち慣れるだろうか。後発のForestや朱にそっくりな音もあるけど、こちらはこちらで綺麗でいい。
 話はエンディングとかあまり覚えていないけど、リリスを核に彼女の気まぐれな即興世界を楽しませてもらった。イブは引き立て役で終わった感じがした。中本氏のジグザグテキストはている・ているほど偏ってはおらず、絞り込んでありながらも軽い余裕がある気がした。音がなかったからだろうか。もう一人のライターである宙形氏のおかげだろうか。まあどちらにしろそれほど惹かれたりはしないけど。キャラはリリス以外はそれほど惹かれはしなかったけど、主人公の設定が凝ったものばかりで面白かった。これもリリスの歪みというか戸惑いの表れなのだろうか。エロゲーのでもいいし。エロさも絵のおかげでなかなか。リリスにしてやられたおかげで風邪を引いてしまったかもしれなかったり。篭もって休みたくなる。