桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

 せっかくゆっくりだらだら過ごしている休日のに、なんか仕事の翻訳やらされたり、何千万円も動くような書類送らされたり、ものみの塔が来たり・・・そう、こんな今の僕がこの作品を読んだって、ただますますひねくれて生活力を失い、社会不適合度を上げていくだけなのでは、と逆恨みをしてしまいそうなくらい良質の作品。設定がそれっぽ過ぎる感がないわけじゃないけど、素直で瑞々しいディティールもあるので気にならない。文学漬けの甘美で軟弱な世界は、小説だから美しいのであって(ついでに、本作は甘くくすんだ感じのイラストも素晴らしい)、現実でさっぱりと処理できない人間にとってはけっこうやばいことになる。トリックスターが何かの生贄にされてしまい、しかもそのトリックスターは女の子で、残された者には、少し優しく甘いけれど暗く遠ざかっていく記憶が残される。今日が金曜日か土曜日だったらもっと果てしなくはまりこめるのに、残念だ!