明るい幻視(ている・ている雑感)

 第1章を終え、だんだんリズムが分かってきた。これは宮澤賢治の呼吸だ。Forest以前にここまで夢遊病的な展開をする物語があったとは。周りの事物に注ぐまなざし、それを科学とメルヘンの混合物に組み替えてしまう無造作な手つき。パイオニアである宮澤賢治ほどのファンタスティックな言語センスはなくても、生物学の目と言葉がそれをある程度代替できるし、けっこう飽きないいいテキストだ。神樹の館の工月が迷い込む世界よりも、今作で銀太が住むことになるモノノケの世界のほうが、賢治のファンタジーのように動的で危険。といっても優しい萌え絵だし、この世界の持つはずの不気味さが、この先でどこまで出ることになるかは分からない。主要テーマは別にあるのかもしれない。
 とりあえず、もっとテキストを味わうために、表示を「瞬間」から「速い」に切り替えた。この作品ほど用語集機能が欲しかったのはない。最果てのイマ神樹の館では、言葉は硬いだけで分からないことはあまりなかったけど、ている・ているでは知らない言葉とかがさりげなく連発されて、そのまま流されてしまう。辞書には載ってない場合が多いし、全画面でやってるとネットで調べるのも嫌だし、そもそもネットにつながらないパソコンでやってるし。まああんまり甘ったれたことを言っても仕方ない。不親切だとかいう不満はない。広辞苑に載ってない言葉は推測しながら進むことにしても、それはそれで楽しいから。