Silent Half (50)


 「半身」となるべきヒロインたちの魅力がなさ過ぎて挫折。凶悪な口癖を前に、メタゲーっぽい話を楽しむどころではなかった。
 (以下、軽くネタバレ注意)
 残念ながら最後までまともにプレイできなかった。ライターさんの感性がまったく理解できない。それとも僕がおかしくなってしまったんだろうか。奇形的な口癖の壁はあまりにも高かった。かつてKanonキャラの口癖にいらだった人たちがつまづいたのも少しは理解できたかもしれない。それでもKanonでは比較的目立たない口癖だったし、音声がなかったし、口癖を目立たなくさせるくらいテキストのほかの部分がよかった。未来にキスをもそれなりの節度はあったし自覚的だった。SNOWの「えうー」はちょっと足りないヒロインに合っていたといえばいえるし、声なかったし、龍の鳴き声だと思えば我慢できた。でも今作の口癖のノイズはどうしても耐えられなかった。酷評級レビューの方が「変なのが語尾についてるのじゃなくて、毎回話のはじめに付いてるのが多少痛い」と面白い指摘をされているが、口癖が何かの感情的な弾みに感嘆詞的にポロっとこぼれてしまうのではなく、口癖そのもので会話を成り立たせようと強要してくるところがきつい(遙香の「ぷぅ」の場合)。主人公も押し切られてしまっているし。以前、一般人の友人の女の子がたまたま「ぷにぷに」という言葉を気に入って(ロシア語で「切り株」(ペーニ)の複数形はプニーpniという)、会話で「かわいく」連発しだしたときも気持ち悪かったなあ。しかも、それが「主人公の理想」をヒロインが意図的に演じていたというのだからちんぷんかんぷんだ。すぐ頭突きをしてくることや主人公がすぐ頭を殴ることも嫌だった。Hシーンも含めて、遥香をいじって楽しいオモチャ扱いしかせず、からかい方も幼稚で無神経。ついでにこの際言っておくと、エロゲーで主人公がヒロインの頭を「ぐしゃぐしゃしてやる」のも嫌いだ。やり方にもよるのだろうけど、大抵の場合は何様だよおまえ(オレ)と思う。一種の愛撫だとは分かっているけど、主人公が照れたりせず、偉そうに褒美を与えている感じがして引っかかってしまうのだ。他のヒロインたちの「うにゅにゅー」とかの場合は、キャラとも声質とも全く合っていないのがつらい。奥川久美子さんやもっちさん演じる冷めたお姉さんや早熟な妹に「うにゅにゅー」とか連発されても困る。西さんの声も個人的には嫌いなタイプのものだった(王立宇宙軍森本レオみたいな声)。期待していた田中美智さんは、綾波式のぼそぼそばかりでセリフが少なくていまいちだった。
 同様に、視覚的な奇形としてのデフォルメ顔も拷問だった。もともと、近年の萌えゲーに出てくるデフォルメ顔は大嫌いで、家族計画の寛やパンドラの夢の永源寺先輩の><などにはかなり困らせられた。クラナドの風子はぎりぎりアウトくらい(渚のはよかった)。今作では饅頭のような不気味なデフォルメ顔がかわいさの記号として繰り返し登場していて苦痛だった。会話の掛け合いテキストも、何か工夫をしていたようだけど、ことごとく裏目に出ていたように感じた。こんなにいらだってしまったのはカルシウムが足りていないからなのだろうか。最近はエロゲーをやっても文句ばかり言っているような気がするけど、そろそろエロゲーを卒業しろという意味なのだとしたら悲しい。
 肝心の物語のほうは、こうしたわけで落ち着いてテキストを読めずCtrlをかなり押してしまったため、あまりよく分かっていない。個別ルートに入ったときや遙香が本性を現したときには、手遅れだった。前半が長すぎて、もう気を取り直すことはできなかった。各シナリオ後半の黒い部分をもっと早くから出してほしかった。遙香は後半の冷めてたときのほうがずっとよく、主人公とは僕は好みが正反対のようだ。評価できるのはメタゲーっぽいことをやっている(らしい)こと、Hシーンがまあまあなこと、I'veの歌姫たちの音楽CDがよいこととかかな。