キャラゲーとはかくあるべきという手堅い出来で、大変楽しませてもらった。ヒロイン達が媚びている萌えゲー美少女という感じがあまりせず、微妙に手の届かない女の子の持つような、爽やか感じがしてよかった。ただし「泣きシーン」はベタすぎてついていくことはできなかった。それさえ我慢できれば、そこに至るまでのヒロインとの距離を縮めていくさまざまなエピソードは雰囲気もバランスもとてもよく、知らないうちに話に乗せられて入り込んでいった。ヒロインと彼女のいる「場所」のつながりが生きていたからだろうか。絵が古いし尺が短いし泣きゲーだしということでぜんぜん期待していなかったHも、この雰囲気のよさのせいか、結構お世話になってしまった。エロいからではなく好きだからという、純愛ゲーエロの一つの正しいあり方（？）だ。アルバムモードも仲睦まじくてよかった（あまり「祐作」という名前を呼ばないという配慮もよし）。
作品のテーマ性や、シナリオのセンスや、主人公の倫理性などにはあまり触れないほうがよさそう。かなり穴は多い。特に「泣き」の部分は見方によってはけっこう間が抜けているので、深く考えないようにして読み進めた。ただしサブキャラクター達が意外によくて和ませてもらった。特に村川さんは声優の演技もよくて、攻略できなかったのが残念だ。
シナリオ別に見るなら、「泣き」が控えめでテキストも異色だったメーシナリオがよくできていたと思う。離加等メー。初めはバグかと思った。沖縄かどこかの出身なのだろうか（追記：調べたら「÷＋＝×−」だそうで）。クラナドのことみシナリオもこれくらいのバランス感覚がほしかった。北都南さんの声でこういうヒロインを見てみたかったのでとてもよかった。ONEや村上春樹など、羊の出てくる話には幻想的でいいのがあるような。一部の謎は再プレイすれば説明されるらしいけど、あの美しいイメージを大切にしつつ、いつかある次回まで取っておこう。
大気、つばさ、琴羽（9月3日が誕生日！）、美雨の各シナリオもよかった。声と立ち絵が気に入ったのも大きい。一色ヒカルさんは坂上智代の声の印象が強すぎて、EDロールが流れるまでまったく気づかなかったけど、声としてはこちらのほうがいいと思う。よい娘です。美雨は頭脳派のヒロインのはずなのにセリフのセンスは一番怪しげだった。まあ、それも可愛さのうち。音楽はとてもよかったし、話もよかった。つばさに関しては、ロリっ娘さんは、ロリ声ではなく爽やかな声なら魅力も倍増だと思い知らされた。白風とめぐみと空はグラフィックに恵まれな過ぎた。全体として、泣きのセンスがいまいちのため、いくつかある悲劇ルートは不要だと思った。
最近、微妙なゲームばかり続けてプレイしていたので、久々にバランスの取れたいい作品に出会えてよかった。
