私屋カヲル『こどものじかん1』
意外と絵も話がしっかりしていた。でもまあ気晴らしになった程度かなあ。設定も画風も単純な表現のインフレに傾きやすいものだと思うけど、せっかく話題になったんだからこの先でがんばってほしいものです。
冬目景『幻影博覧会1』
昔と比べてうまくなったかなあと思って買ってみたけど、やっぱりストーリーテリングが下手。下手というか今作では無個性になっている。この絵でステレオタイプな探偵小説というのはなんとももったいない。絵は相変わらずうまくて、というか昔にくらべて安定度が増していて目に優しい。マンガというより画集として見たほうがいいくらい。
近藤ようこ『水鏡綺譚』
著者は網野善彦とか読んでいた民俗学好きらしく、本書も典型的過ぎるくらい民話的な構成。伝奇風の小ネタもしっかりしている。絵は著者が白状している通りけっこう下手だけど、肝心の蔵女的なヒロイン鏡子はきちんとしているのでよかった。あと、一話に一シーンくらい、ハッとするくらい上手く配置された象徴主義的なコマがあったのもよい。コマのつなぎ方がなかなか上手いところはけっこうあった気がする。つげ義春は私小説くさくてベトベトしているのが厄介だけど、こちらは作者が女性だからか、エロさも抑えられてグロくなっていないのがよい。でも折口信夫の『死者の書』級の名作となるには、絵も話も今一歩足りない。