ひよのボイスレター

 エロゲーのフルボイス化の浸透、声優によるシチュエーションCDの流行、サトウユキの過剰な演技など、エロゲーの音声部門のフロンティアは近年着実に開拓されていっている。エロゲーヒロインに本名で読んでもらえるという長年の夢がかなったとき、僕はもっと喜んでいいはずなのだが、まだどうしたらいいのかわからない自分がいた。設定的には、本名で呼ぶことに意味を持たせた本編の内容や言葉に溺れがちなひよの性格を絡めていて、見方によってはうまくまとまっている。とりあえずウォークマンに入れてみたが、サントラといっしょに繰り返し聴いているうちに、この声のトーンは恋人に甘く語りかけるときのものというよりは、恋人か友人かを問わず、誰かを元気付け、信頼し、優しく呼びかけるときのものであるように思えてきた。思い焦がれているというよりは母性と癒しを感じさせる。声の受け取り方なんて主観的なものだから僕の一時的な思い込みに過ぎないもかもしれないけど、演技っぽい媚びた声ではなくてこういう落ち着いた感じなのも、手紙という一呼吸あるメッセージの形式とマッチして、また、距離があることがかえってリアルさを感じさせることもあっていいかもしれないと思える。今後もこういう企画はあるかもしれないし、いつかは自分の名前とデフォルトの主人考の名前が一致するゲームが現れるかもしれないけど、今回こうして青山ゆかりさんのひよに一度だけ名前を呼ばれたときの不思議な優しさの感覚は忘れないようにしたい。一言しか呼ばれていないのにぐだぐだ書きすぎているような気がしないでもないが、これも作品の不可欠な一部であり、ひよというヒロインの大切な一部なのでということで。