からめ手の救済

 東方シリーズの魅力は暗いバックストーリーによるところがけっこうあり、偶然かもしれないけど、紅魔郷妖々夢永夜抄など以前の作品では500年とか1000年とかいう時間設定がよく使われていたが、風神緑や星蓮船では宗教モチーフになってきている。個人的に宗教モチーフのフックには割と釣られやすいので、風神緑や星蓮船で触れられているような救済のイメージは、その安易さや中途半波さゆえにそれがかえって冒涜的なものだったとしても、惹かれてしまわざるをえなかったりする。ニコ動で聴いたWhite Lotusという聖白蓮のアレンジ曲がよかったということが言いたかったんで。
 けっこう真面目に宗教的な方向に向かっているのとしては、元長柾木スレでプッシュされていた心のつくりかた講座シリーズががんばっていて感心した。動ポモで言うデータベースをバージョンアップして、もっと純度の高い萌え体験を追及しつつ「愛」を提唱する。東洋では別の長い伝統があったのだろうけど、西洋では140年前にランボー共感覚の詩を書いて以来、象徴派の文学は文学の外側を目指し、シュタイナーの人智学のノウハウに学んだベールイは音響長編詩「グロッソラリア」などの一連の実験作で身体からの精神の変容を試みた。「心のつくりかた講座」ではヨガ的な身体技術によってヒロインとの高い一体感を目指すという、傍から見るとグロテスクなために象徴派は諦めてしまった道が、生真面目な作者氏によって進められている。ヒロインが純粋な存在である分だけ、読者も純粋になることが求められるという美しいシステム。作者の提案する新言語「言霊」はまだ色々と未整備なものだし、忠実に実践しようとするとそれだけで疲れてしまいそうな面倒なものだし(ワーグナーの総合芸術みたいに)、愛やコミュニケーションにおいては一体感だけが善とされるわけではないのだろうけど、それでもこの方向にはまだ可能性があるように思えるし、なんか観測者(他者)としての「神」の概念まで導入されてて風通しもよさそうになってきたし、作者の人にはがんばって欲しい。あと、動画を見ているうちに3Dカスタム少女のヒロインたちに萌えてきてしまった。「悦ばしき知識」を美少女たちと共有するという紳士的な喜び。でもこれは自分で買っても使いこなせないと意味がないんだよなあ…。