白光のヴァルーシア雑感とか

 この不景気の中での在職しながらの転職活動は全然余裕がなくていろいろと諦めかけたけど、ありがたいことに何とか新天地の目途がたち、少し心が軽くなったところで風邪も治ってきて、久々にゆっくりひきこもれる二連休なのでヴァルーシアを進めてみる。第5章の砂漠の旅の途中まできたところ。
 なかなか定まった気のしてこない話の軸や、めんどくさく膨れ上がってしまった設定用語集の山や、重苦しくてテンポもいまいちな声優陣や(刈谷さんの人が苦手です)、前作までと違ってなかなか萌えない物語の運び。アラビア風という非常に非日常的な世界を舞台にしているからこそ、何でこの物語を今自分は読んでいるのかということに思考がずれていきやすいところが魅力といえば魅力で、この異世界の箱庭的な閉塞感と、それとは反対の広がりのある青空や砂漠と、おなじみの不安や倦怠感を感じさせる反復の多い語り口と、それとは相容れないかのようにエキゾチックに完結した存在感を感じさせる絵やレアリアの細部は、NHKの異国の町の風景を映しているだけの深夜番組を見ているときのような、物語が抽象的な模様に変じてしまうような、浮遊感というか何かが乖離したような感じを時折与えるような気がする。キャラデザインが一部模様に侵食されているようなものになっているのもいまさらながら独特で、似たアプローチでエキゾチックな異国物のバレエのエスキスなんかを描いていたバクストの絵のような、冷ややかな様式性と抽象模様の与える陶酔感に憑かれていたことがあって、学生時代にグラナダアルハンブラ宮殿で、無限のアラビア模様の中を惚けたように彷徨っていたことがあったのを懐かしく思いだした。抽象模様が無意識の催眠的な話に滑っていく展開は分かりやすいもので、4章くらいまで進んだ頃には僕もようやく物語のテンポと厚みにペースを合わせられるようになってきたようで、ナナイの冷たく艶やかで豊満な身体や、髪や、クセルの眩しい白い肌やロリコンホイホイな身体の線になんとなく見入っていた頃には、一丁上がりな感じになってきた。日常シーンの音楽もあくまで冷ややかで、ここが異国であることを忘れさせない。その中で主軸となるべきアスルとクセルのキャラがジブリ的な分かり易い配置なのはバランスの問題なんだろうけど、この先はどうなっていくのか。それにしても絵と音楽の力はけっこうあなどれないな。