Love x Evolution セツ (50)

<・・・>それにペトロニウスの時代に爛熟の域に達したラテン語は、この頃から分解の一途をたどりはじめていた。キリスト教文学の登場は新しい思想とともに、新しい言葉、まだ用いられたことのない構文、未知の動詞、微妙な意味をふくんだ形容詞、当時までのロオマ語には滅多に見られない抽象的な単語などを持ち込んだ。テルトゥリアヌスは先駆者の一人として、これらの語法を取り入れたのであった。
 ただ、こうした崩れた文体は、テルトゥリアヌスの死後、その弟子たる聖キュプリアヌスや、アルノビウスや、ねばねばしたラクタンティウスらの手にかかると、たちまち魅力を失った。それは不完全な慢性化した腐敗の味であり、キケロー風な誇張への不自然な復帰であって、紀元四世紀およびその後の時代の異教の言語にキリスト教のにおいが籠って生じた、あの特殊な風味はまだ現れていなかった。古い世界の文明がぼろぼろに崩れ、蛮族の圧迫につれて、幾世紀来の血膿に腐った帝国がどろどろに溶けはじめる頃になると、ようやく異教の言語は貯蔵された猟獣肉のように腐り出し、崩れはじめるのである。<・・・>
 デ・ゼッサントのラテン語に寄せる関心は、このようにラテン語が完全に腐りきって、その手足を失い、その膿を滴らし、その肉体全体に腐敗がひろがって、ただ幾つかの部分のみ堅固な外観をとどめているにすぎなくなった時期にまで、弱まることなく続くのであった。しかし、この最後に残った堅固な部分をも、キリスト教徒は容赦なく捥ぎ取って、新しい言葉の塩水のなかに漬けてしまうのである。<・・・>(『さかしま』第三章、澁澤龍彦訳)


 キャラの背景となる情報は一切なし、エロビデオのごとくエッチシーンのみなので、崩れかけたグラフィックに関して、こういうデカダンチックな想像力を動員して鑑賞でもしない限りは厳しい・・・