ルート別にクリアした順に一言ずつ。
・はるみ。前半の狂ったテンションが後半に失速しすぎたのが残念。「ダーリン」という呼びかけはまったく日常的なリアリティのない、古臭いマンガ的な言葉で、本来は好みに合わないノイズのはずなのに、メイドロボというリアリティのない設定と、真っ直ぐな気持ちで何度もぶつかってくる娘を見るうちに、そのうるさいはずに元気な呼びかけがなんだか懐かしく甘いものに感じられてくる不思議。エンディングを覚えていないんだけど、この甘い感じがもっと欲しかった気がする。テーマ曲は唯一耳に残るものだった。
・まーりゃん。はるみと同様で声優さんの声がけっこうよく、セリフはくだらなくても聞いているだけで華やぐような騒々しい囀り。斜め向きの立ち絵が何気に目鼻立ちがすっきりしていて可愛かったり。終盤のエッチシーンへの突入からエンディングの漂流までのテンポ(と絵)がすばらしく、全体的に夢の中にいるかのような現実感のない甘い雰囲気のこの作品の中でも、いい感じに現実離れしていた。
・菜々子。シナリオの内容忘れてしまった。えーと、さかあがりしてからどうなったんだったか・・・。ごめんなさい。
・シルファ。ダ行がラ行になってしまう口癖は、テキストで繰り返されるとしつこくてしらけるので音声だけにしてほしかった。声優さんは割と自然に発音していたのでよかった。口癖が単なる萌え要素ではなく、ヒロインの内面的な問題とかコンプレックスと結びついていたのはよかった(本来はそういうものなのだろうけど)。キャラデザが淡白で勿体ない。主人公にかなり依存するような設定の話なのに主人公がアレなので、いまいち盛り上がりに欠けるこじんまりしたものになったけど、シルファ自体はとてもよい娘だった。他ルートでのやきもちぶりも可愛かった。
・よっち。「ッス」という決定的に萎える口癖と、すばらしいおっぱいの持ち主。口癖はクリック連打であまり聞かないようにし、おっぱいはじっくり堪能。ストーリーはあまり覚えていない。ごめんなさい。
・ちゃる。「ちゃる」というあだ名に抵抗を感じた。自分のようなおっさんに「ちゃる」なんて呼ばせないでくれ。いや、おっさんでなくても、こういう女の子同士の世界でしかダメなものを押し付けるのは一種の暴力だろうと。なんかやけに手も長いし。受け入れたけど。そして、よっちルートの話から分岐するのに、よっちと何の軋轢も生じないご都合主義の滑らかさにちょっと感動した。話自体はそこそこ起伏があったし、主人公も殴られたし、それなりによかった。エッチシーンの絵も相変わらずとてもよかった。気がついたらとても女の子らしい女の子。
・春夏。絵だけの気の毒なヒロイン。誰も選ばない選択肢を続けると入るルートで、本気で恋愛をしなかった主人公がたどり着くヒロインに本気の告白をする話なわけだけど、告白の言葉だけがいっちょまえで、ほんとに春夏を愛しぬけるのかかなり疑わしい主人公がこんなふうに言ってみても、なんだか皮肉な感じがする。単なる性欲を持て余す子供に対して、周りがやさしすぎる。やんわり断る春夏が賢いのかな。
・郁乃。この作品の中で唯一クリック連打せずに読めたテキスト。ギャグテイストの強いこの作品の中で唯一吹いたシーン(主人公某の名前が出てきた所)。バッドエンドにしかエッチシーンがないという意地の悪さ。言葉を失う人魚姫の話は好きだし(いいソ連アニメがあった)、写真を見つけたときの悔しさには心を打たれた。その陰を抱えたままでも生きて欲しい。本当の主人公が待っているから・・・(未完)。
・このみ&環。このハーレムルートにおいて本作の現実離れした幻想の楽園は、ついに善悪の彼岸からさらに先にある宗教的な境地にまで辿り着いた、なんて馬鹿なことはチラッとしか思わなかったけど、それくらい神々しい構図のエッチ絵が一枚あった。和辻哲郎が法隆寺の金堂や五重塔に表現された力の動的な均衡に驚嘆していたように、このみと環の絶妙な動的バランスを封じ込めたあの絵はまさにエロゲー的聖家族とでも言うべき建築的な完成度を静かに湛え、ヤマもオチもイミもないこのハーレムルートの形式的な強度の要として、この作品の的外れで意味のない美しさを意味もなく象徴しているような、いないような。環の性格と顔とか「タカ坊」という呼称とか、本来は個人的にまったく受け付けないはずなのに、この建築的な完成度の中ではあまりうるさくは感じられない。クリック連打は避けられなかったけど。
キャラゲーとしてみるなら、郁乃とはるみがよかった。期待していた音楽は空振り。絵は素晴らしかった。
益体のないことばかり思い浮かんだけど、気軽にクリック連打しながら進められて、安く買えた息抜きのゲームとしてはよかった。主人公のダメさ加減は突っ込んでも仕方ない。僕自身が彼を叱れるほどできた人間ではないし、彼にいらだつだけエネルギーの無駄なのでそこは流し読み。これはひたすらヒロインたちの歓待を受ける接待、という言い方がいやらしければ、もてなしのゲームなのであって、そのもてなしに感謝するのみ。何よりも絵が雄弁に語る。あとは、作品が緩いおかげでくつろげたのはよかったといえるのかもしれない。積極的な価値はあまりなさそうだけど、Another days なんてそんな曖昧な存在感がいいのかもしれない。
参考:月森さんのエントリ http://tsukimori.sakura.ne.jp/2008/07/toheart.html
思えば買う前にこれを読ませていただいて頭のどこかにあったはずだったのを忘れていた。ゲーム前半のおかしなテンションに未来にキスを的な不穏な気配があったあたりのこととの関連。