西尾維新『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』

 うまい。惚れ惚れするような無意味な構造美。意味がないということ自体が意味があることを示しており、その生々しいけど乾いたリアリティがすっと染み入る。これは現代に生きる(笑)日本の伝統的な工芸細工として、その美術的価値を評価しなくてはならない。ややネタバレになるが、School is not world.というフレーズが、「世界」という言葉冠して学園物を描きつづけてきた、この裏セカイ系シリーズのひねくれた立場をよくあらわしていて面白い。もう他の巻の内容はほとんど忘れてしまっているけど、また読み返せば面白いんだろうな。まだ今回が最終巻ではなかったことに喜びを感じると同時に、次回が最終回になってしまうことがとても残念だ。大人が見るべきセカイを書いてしまったこの巻のあとでは、もう何を書き加えても蛇足にしかならなそうな気もするけど、最後は今まで以上に期待させてもらうとします。