花散里の手

 久々に夢の浮橋を進め、花散里編を終わらせた。これが見事なできだった。原作(の現代語訳)はまだ途中までしか読んでいいないので勘違いかもしれないけど、確か花散里って数ページで終わる地味なキャラだったはず・・・と思って今調べてみたところ、やはり地味な役回りだが何回か登場するとのこと。その彼女の原作では描かれなかった姿をうまく描いているんじゃないかなあ。弘徽殿の女御と渡り合うところが見所だった。アクションなしで、自分と藤壺と弘徽殿を対比させながら、愛について語るだけで相手を説得するという、浮世離れしたピュアなぶつかり合いにしびれた。こんな直接的な駆け引きは原作にはないけど、これも愛と現実との衝突をテーマに据える、源氏物語の魅力をよく引き出したエピソードだと思った。ひとつの話の中で複数のヒロインを見せているのもいい。そしてシナリオの引き方がうまかった。吸い込まれるように澄んだ青い空を背に手を差し伸べる姿が印象的だ。原作だとニアミスになるエピソードに美しい陰影をつけていて、むしろ原作の花散里編が色褪せて見えるくらいだ。源氏物語の二次創作って、伝統が長いだろうし成熟しているんだろうなあ。