- 作者: うえお久光,綱島志朗
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 文庫
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うえお氏の文体はもともと言葉が軽いのだから、これくらい妄念に取り憑かれたような強い物語を語ってみてちょうど釣り合いが取れると思う。欲を言えば、もっと硬派でもっと滑りの悪い文体でもいいくらいだ。イーガンの小説をラノベでやったようなところがあるけど、この物語は女の子二人の物語になっているわけで、欲望の生々しさが百合的に昇華されているようで、幻想的な儚い重みの妄執となっているのがまた心地よい。何を言っているのか自分でもよく分からないが、幻のアリスシナリオや加則シナリオや幾多の平行世界がある中で、主人公が選んだ「現在」の世界だけが特別で、その他の未来も過去も平行世界もすべては派生的なものであり、そうした中で彼女が辿り着いた幸せが、どこか夢のような頼りなさがあったとしても、とてもまぶしくてぼおっとしてしまうというか。
解決法が王道過ぎるとかそういう突っ込みはとりあえずはいいです。どうにかして物語は収束させなければいけないわけだし、革新的でないと気がすまないほどに今の自分はグルメなわけでもないし。未来も過去も現在から枝分かれしているという世界観のイメージと、それだけでは辿り着けなかったほどの幸せ物語、その心地よさ(あるいは読書の楽しみのクオリア)を覚えておきたいと思う。いつもながらゴテゴテした言葉遣いになってしまったが、とにかくそういうこと。