露呈(Футакой Альтернатива)

 第10話まで視聴。うたわれるものやフェイトのように絵が崩れないのがうれしい。狂騒的なテンポやエクスプレッシブな身振りに覆い隠されていたもの、あるいはずらされていたものが、露呈した。恋太郎(ってこういう字だったのか。皮肉な名前)は探偵なんていう地に足のつかないことをやっていた、運良く恵まれていただけのモラトリアム人間、焼け出されてニートみたいになって自分の甘えに気づく。あのほっぺたが微妙にふんわりした顔の輪郭も伊達ではなかったわけか。テーマが明示されることによって、今まで製作者の願望の反映みたいに見えてちょっと不快だったことが、きちんと回り始めた気がする。謎めいた部分は減ってしまったけど。
 エクスプレッシブで「切れ味のある」身振りや演出は、このアニメでは7割が不快で3割が爽快、という感じだろうか。秋山瑞人の小説だと2割不快で8割爽快くらいの割合なんだけど、表現手段が豊かなアニメのほうがバランスをとるのはかえって難しくなるんだから、打率3割でもかなりのものだと思う。
 ところで、このフタコイは全部で何話なんだろうか?12話くらいだったとしたら、OPで活躍している他の双子たちが話に入ってくることはなさそうだ。そうなると、マルチシナリオのエロゲーにおいて、選択されなかったために受肉することもないヒロインたちみたいな感じになりそうだ。このアニメでヒロインたちが双子である理由は、9,10話あたりで説明されていたとおり、萌要素としての三角関係のモチーフを導入するためではなく、選択とノスタルジーのテーマに関わること。さらにもう一つ言えそうなのが、アニメやエロゲーなどのキャラクターが複製の可能性を持ったアンビバレントな存在だということ。選ばれなかった沙羅の分まで、恋太郎と双樹は幸せになることに決めたけど、その背後にはあの何組もの双子たちがいることになる。ともあれ、あのイカの正体が父親とかいうオチは出来れば勘弁してほしい。壊れたまま終わってくれないかなあ。