忘れな草 (65)


 フラストレーションを溜めに溜めた挙句、ご褒美はちょっとだけ。そのはかない結末はそれはそれでありと思えるものだけど。
 主人公がすぐに気絶したり金縛りにあったりで、無邪気ぶっているがひ弱くて根暗。『僕と、僕らの夏』の主人公並みの救いがたい人間で、マナマナのような人のお仕置きが必要だった。それっぽい展開になった時にはキタ!と思ったが、結局美しい結末に黙らされた。その展開自体はよかった。汚い所や暗い所に咲いているからこそ綺麗な花というのもあるとして。
 テキストも曲者だった。地の文が背伸びしたねちっこい文体で書かれており、時折うまくいっているように感じられるものの、大部分は読みにくかった。僕も偉そうなことは言えないが、読点でだらだら文を重ねずに、手間を押しまず句点で文を短くしていればもう少し読みやすくなったと思う。エロゲーテキストの不備であるルビがきちんと振られているのは良かったが、常識的な易しい言葉ばかりで逆効果だった。絵はデザイン・色調共になかなかよかった。H絵が今ひつ迫力がなかったのが残念。
 カエデシナリオの水月を髣髴とさせる結末(那波だったかな、あの奇妙に明るい結末の)は良かった。結末に限っては。
 セナシナリオは不本意に美しい話で、同じくどこか物足りないが美しいスズネシナリオと合わせて、儚い印象を残した。ステレオタイプなネタとか言うのは無しにしたいところ。