Silhouette (65)

 青い涙のミルカ編みたいな力は感じなかった。文章はもう少しだけ器用になっていたし、絵ももう少し洗練されていたけど、システムがかなり困ったことになっていて、読みたいテンポから遅れてばかり。このライター氏の文章は軽快にクリックしていけないとかなりもったいない。
 ストーリーの独創性や心理描写の凄みというよりは、シチュエーションにかけるパワーみたいなのが持ち味だろうか。会話にしろモノローグにしろ、長くなっても息切れしたりウジウジしたりせず、読み手に負担を感じさせない(テクスト表示の遅さによるストレスは除いて)。文章を仕方なくひねり出したり、ステレオタイプなフレーズで妥協しているのではなく、ステレオタイプを生きているというか、原始人にステレオタイプは関係ないというか。どなたか書いていた通り、暗めな主人公が愛を求める必死さが好ましい。これだけ好きだ好きだと体を張ってきちんと言える主人公は、うーん、『好き好き大好き!』くらいか?(やっぱ日本人歪んでる) ヒロイン達のほうもそれに応えるだけの包容力や体力を持っていて頼れる。ユーモアのセンスも含め、なんだか骨太な感じで、これが二次元美少女だからいいんだろうなあ。キャラデザも微妙にいいんだな、スカートとか胸から腰とか。おっぱいはどれもよく、HCGのときだけは画面効果が遅いのもエロくて許せた。目はやはり青い涙のときからいまいちなまま。もうちょっと丸みや表情がほしい。

(以下、ちょいネタバレ)

 ストーリーはどれも目新しさは少なく、特に話がこじんまりとした前半3ヒロインは地味な感じになってしまっているが、キャラの魅力はどのヒロインもよく出ていた。非日常的なイベントはなくても、ちゃんと生活感のあるエピソードが出てくるので情が移ってしまうのだ。メイドや未亡人や教師という萌え記号としての設定から、さらに一歩踏み込んだようなキャラ造詣が心地よく、あんなヒロインと幸せになれたらというハッピーエンドの心地よさがある。後半の3ヒロインについても喜怒哀楽のツボを突いてくる展開でよかった。麻弥と佳純シナリオはやや無神経に錯綜・重複していた部分もあったけど。ONE、イマ、朱、Carnival、青い涙、そしてこの佳純・・・、過去の話にぐっと来るものが多いというのは何の法則があるんだったか。キャラクターに「奥行き」が与えられ、プレイヤーが行間を読んで、もともとやや不自然だったキャラたちを自分のものとしていく過程だって誰か書いてたっけ。それはともかく、佳純はよかった。それだけに何とか別のエピローグがほしかった。これじゃあただの悲しい話じゃないか。あの別れをさらっと流さないでほしかった。どうせなら奇跡を起こすか、幻想的で曖昧な終わらせ方にして余韻を残すかしてほしかった。そういえばむかし加奈の感想でも似たようなことを書いた気がするけど、ダメ人間なんで浸りたいんですよ。甘やかしてくれよ・・・。まあそれがなくも十分よい作品です。