カラマーゾワの姉妹

 ―――「悪魔のミカタ10・11・12・13」読了。
 例によって13巻が見つからず、2週連続で日曜を潰す羽目に。今回は池袋でアニメイトを見つけることができ(またもやジュンク堂にもなかった)、さすがに置いてあったけど、秋葉原アニメイトとは違って中学・高校生くらいの若い人ばかりでみんな背が小さいし、僕はのっぽな上に無精髭のムサい男性だったのでかなりひるんだ。どこかの映画館でエヴァに行列ができていたのを通り過ぎたけど、そこも若くてこぎれいそうな人間が多い感じで眩しかった。ほんとはそうでもないのだろうけど。

 ともあれ、苦労して買い求めた甲斐のあった13巻だった。
 池袋のLIBROで13巻を探していたとき(ここにはなかった)にふと見かけて手に取った亀山訳『カラマーゾフの兄弟』をぱらぱらめくってみて、ずいぶんと字が大きいせいか、ひらがなばかりの読みにくそうな訳文だなと思った。最近の氏の著書は読んでいないけど、彼の文体の魅力はひらがなよりは、攻撃的なほどの熱気とひと癖ある推理力でやや大仰な言葉をリズミカルに畳み掛けてくることだったはず。小説の翻訳ならばプラトーノフの『土台穴』に表れていたような。10年前に小さな活字の新潮文庫で慣れ親しみ、熱気に包まれて大審問官伝説を「布教」したこともある痛いファンとしては、最近のヒットは嬉しいことで、亀山氏の解説も相変わらずテンションが高くて頼もしく思ったし、でも、僕自身は今後この小説をゆっくり読める機会なんてないだろうな、とちょっと寂しくなる。
 その余韻をどこかに引きずっていたからだろうか、『悪魔のミカタ』って、忘れていたけど設定の骨格はキリスト教から持ってきているんだよな、しかもこのIT編はテーマもかなりそっち系だなということを気づかされる。まあそれは見事に日本化されており、プロットの組み立て方は(うまい言葉が見つからないが)村上龍風の群像サバイバル型、テーマの見せ方としてはエヴァみたいな「一つになる夢」。といっては味気なくなってしまうが、11・12巻と「うーん、今回は設定に流れすぎかなあ」と思っていた分、13巻は見せ場の連続で唸らされた。ヘタレの常というか判官びいきというか、去り行く者に情が移るのは仕方のないことで、しかもそれが女の子だったりするともう。しかもそんな女の子とぶつけられるのがまた女の子とか。エレナ・水彩・遼子・サキ・美里・唯、彼女達は正直なところ僕の中で混ざってしまって誰が誰だかよく分からないところもあるけど、みんな一生懸命で実にいい。読んでていい。作者はどのキャラも主人公を張れるだけの器量を持ち、誰が主人公なのですかと聞かれるのが嬉しいという。ジャンルも書く度に変わるような感じ。そんな作品をポリフォニー小説と呼ぶのは大げさかな。ボリューム感は十分だったけど、コンパクトにまとめれていた10巻の反動か、やや設定がかさばり文章に贅肉のあった今回。このあとはどうなることやら。音楽が止まりませんように。