朝からずっしりミルクポット (85)


 アンジェリカの方はゆっくり進めているんでまだレベル2だけど、もしやこれはアンジェリカを超えているのではないか。エロゲーの進歩は速い。少なくともテーマにおいては相当先まで突っ走って、孤高の作品といっていいくらいになっている。同人ゲーム界のことは何も知らないんでアレだけど、少なくとも絵と音声と音楽の組み合わせなど、感心するくらい完成度が高い。
 伊達に『未来にキスを』の原画担当だったわけではないようで、この作品では「オナニーの哲学」とも言うべきものが圧倒的な力で実演され、正直驚いたし、こんなゲームが生み出されたことを嬉しく思った。今回はみさくらなんこつがシナリオを書き、声優の演技指導までしたということで、みさくら語がどんな風に発されるのか期待できたのだけど、実際に文字のパワーと十二分に渡り合っていたし、お姉系のサトウユキさんとちがって櫻井ありすさんはかわいい系の声なので、リミッターが外れたときの迫力も一層凄かった。ウィンドウ枠の文字制限からくる韻文化(厳密には韻文ではないけど)されたセリフが、迫真の演技で音声化され、モニターからはありえない過剰な絵を突きつけられ、なにやら呆然としてしまう。
 作り手の独りよがりな自己満足を批判してオナニーということがあるが、そこで思考停止してしまうような人にはこの作品は用はない。何のためにとか問うのも愚かだが、伊織がここまで自慰に囚われ、四六時中おちんちんと対話している(笑)その凄さは、なにやら人間が見てはいけないものを垣間見てしまったような気分になる。ビンゲンのヒルデガルドと言ったらちょっと違うが、中世の魔女たちはこんなレベルの狂い方をしていたのかもしれない。
 真面目な書き方をしてしまったが、それは後半の印象があるためで、前半はかなり笑える。ふたなりというものが、あるはずのないものがあるはずのないところにある人のことを指して言うように、本作のヒロイン伊織がかわいい女の子であるということは、実は相当無理のある組み合わせなのだ、伊織のかわいい容姿のおかげで、本作は単なるグロテスクに流されないギリギリのバランスをとれているのだ、という気がしなかったでもなかったが、そんな皮肉な見方も、虚空に向かって放たれる伊織の魂の叫びの前にはあまり意味はない。
 作者の意図を読んで云々といった作品ではなく、伊織に導かれて共に明後日の方向へ突っ走る作品。「ひんも゛」をしごくことと感動することは両立する。
 (みさくらさんはこういう暑苦しい感想は嫌いそうな方だけど、ご勘弁ください)