涼元悠一『planetarian』

Planetarian (VA文庫)

Planetarian (VA文庫)

 これを読んでからゲームを再読して、ポロポロと泣いてしまった。
 前回は『星の人/系譜』を読んだといっても、この短編集は読んでいなかったのでその内容はほとんど分かっていなかったはず。雰囲気だけで何かの電波を感じていた。やはりこんな風に丁寧に物語を与えられないと、突発的に、断片的に与えられたシチュエーションで判断しようとすると、その断片がよほど個性的でない限り、どこかで見たものの借り物みたいに感じてしまうことがある。本作のSF的カタストロフ設定が僕にとってはそんな感じだったわけで、初めからこの短編集と合わせてゲームをプレイできていればその厚みが分かって別の印象があったのだろうけど、いまさらそんなことを言っても仕方がないし、今回こうして1年半ぶりにゲームを再プレイする機会を与えてくれたのだからこれはこれでありなのだろう。
 ゲームをやっただけでは結局想像の余地を残して曖昧に終わっていたストーリーが、どうにか継続していたことが分かって少し救われた気になった。しかしそれもまたはかない束の間の物語であったとでもいうかのように、最後の最後に描かれるのは人間のいない世界。その世界の中でつむがれる言葉だけが人間の思いを優しく伝える。幼稚な言い方になってしまうけど、人間とロボットが同じになって同じ夢を見ることができるようになったら、本当に素晴らしいなと思う。人間だけでもなくロボットだけでもなく、一緒にというのが特に。
 文体においてもテーマにおいても突出したものがないときにどうやったらよい作品ができるのだろうか。やはり何か形式と内容の調和みたいなものなのだろうか。物語が全体として美しくなるように、うまく断片化されているような感じがした。物語の時間は人の一生を越えるほど長いのに、描かれたのはその中のいくつかの瞬間だけの、寡黙な物語とも言える。寡黙で優しい。そういうある意味デリケートな作品だから声高な説得力はなく、あるのは言葉にするとかき消されてしまうような、読者の心の中にしかないようなはかない気配だと思う。ここら辺で僕も黙ったほうがよさそうです。