- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2009/03/25
- メディア: 文庫
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その後、ソードワールド小説を読まなくなって、自然と山本弘の名前も忘れた。と学会の人だったことも知らなかった。今回はブックオフでたまたま手にとって買ってしまった。
というわけで、二十数年ぶりにこの人の小説を読んだ。さすがに衝撃的な斬新さは感じなかったけど、読みやすい文章で萌えるポイントをうまくとらえつつ、爽やかで夢のあるお話を語るのは、ソードワールドの頃と変わっていないように思えた。「ときめきの仮想空間」のジュブナイル感とか、ストレートすぎて無事に終わってくれるか心配になったくらいだ。「詩音が来た日」では、昔老人ホームでバイトしていたときのことを思い出した。終盤の章では、AIにとっては僕たちの現実こそが仮想現実であり、人間というキャラに幸せにするためのゲームであるという構図は元長的というかエロゲー的で小気味よく感じた。人間と理解することは出来ないけど許容することは出来る、そして自分たちなりに愛することも出来る、というのは、別にAIと人間の間だけの話ではなく、普通に人間同士でも起こっているようなことで、この「そして自分たちなりに愛することも出来る」の根拠の不安定さが見方によっては不穏でもあるのだけど(愛せない場合には、「許容」という言葉のニュアンスが寒々としたものになる可能性が高い)、この作者はそんな嫌らしいところをほじくらずに、主人公の少年を素直に納得させ、美しく話を締めるのである。明快だけど夢がある。それにしても、人類は衰退しましたでもあったけど、宇宙はもう有限の存在である人間には物理的に届かないものになってしまったというは寂しい。アイの世界ではどうやら人間のデジタル化とかできなかったみたいだし、見事に衰退していたし。あと人類の欠点、愚かさが単純化されていて、そんなにバカばっかじゃないような気もするけど、そんなところつついても仕方ないかな。高度なAIとアンドロイドの普及まで何とか生き延びたい。