球詠 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
- 作者:マウンテンプクイチ
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: コミック
アニメを観てはまり、マンガを一気に読んだ。ちょうど8巻が発売されたばかりだった。
最近読んだ順に ハチナイ → ぐいぐいジョー → 球詠 とだんだん男性の存在感が希薄になっていき、球詠では観客もすべて女性で男性は一切存在していない世界のようで、女性の同性愛はごく自然な感情になっている。野球に集中したいから後回しであり、野球を通じた心の交流に比べれば不自然な感情という位置づけなので、希が途中から芳乃への気持ちを自覚してくぎづけになってしまっているのを見るのは面白いけど、ちょっと心配になる。それほどまでに野球要素が純化されていて、女の子を鑑賞して感情移入したいという欲求は野球部分だけで十分に満たされてしまっているので、もはや恋愛要素は不純にもみえかねない。
その意味でも、例えば、久保田の熊谷実業との試合のエピソードが素晴らしかったことを覚えておきたい。この試合では新越谷の女の子たちのカップリング的な掘り下げはなく、梁幽館戦のカタルシスの後の喪失(3年生の引退)を消化するためのエピソードだった。ライバルを失った久保田も気持ちを新越谷にぶつけるわけにもいかず、新越谷は代わりにしかならないことを受け入れ、年下ばかりのチームに敗れて引退する(そしてひそかに藤原が思いを託されて成長する)。敗北を受け入れ、さっぱりと球場を去る姿が梁幽館戦とは別の感じで印象的だった。優勝するチーム以外はすべて敗れて3年生は引退するので、何も特別なことはないのだけど、野球は喜びや楽しさばかりではなく、傷も与えるものであると久保田の表情を見ていると感じる。隣の扉絵は熱暑の熊谷の実家で暑そうに寝そべっている久保田の一コマで、そこにも勝手に感傷を見出したくなるけど、絵柄は全体的にめそめそしていないのがありがたい。どのキャラも真剣に野球に向き合って、野球を楽しんでいるのを見ているのが心地よい。
とはいえ、梁幽館戦でホームランを打った希が塁を回りながら芳乃を指さしたのにはさすがにぐっときた。あと珠姫が詠深に話しかけるときに密着しすぎているカットかやはり見てしまう。練習方法とかヤジとか試合運びとか、ディティールにこだわるマンガだからか、いつのまにかそれ以外の部分のファンタジーを受け入れてしまう。
それにしてもアニメを何度も観返して、同じ話をマンガでも3回くらい通読しても飽きないのがおかしい。アニメの次の回は原作をもう読んじゃったのでさすがにこんなはまり方はしないと思う。
8巻では新しい選手が登場したけど、あっさり自分の居場所に収まれそうでかえって不安になる。左腕として大野の分まで活躍してほしい。
1巻は12刷だった。たくさん売れて長く続いてほしい。