映画『カメラを持った男』

Дзига Вертов. Человек с киноаппаратом (1929)



 ジガ・ヴェルトフによる映画の金字塔。映画史的な意義はよくわからないけど、良質の映像作品だということはわかる。物語的なシナリオや言葉のない「純粋映画」への挑戦という、アヴァンギャルド芸術の持つ理論的な側面が一つ。巧みにモンタージュされた映像たちの流れがリズムを生み出す。もう一つは、若々しく誇らしげに駆動する機械たちと人間の営みを重ねあわせる、前期ソヴィエト美学の提示という歴史的側面。ネップはもう終わってしまったかもしれないが、まだまだ明るい20年代の雰囲気がよく出ている。音楽はなぜか現代のものがついてたけど(オリジナルは音楽はないのだろうか?)、どうせなら中途半端に現代的なのではなく、テクノとかでもよかったと思う。
 モンタージュの畳み掛けは現代の音楽クリップビデオを髣髴とさせる。オタク的には、エヴァンゲリオン劇場版であったイメージの洪水やメタ視線のシーンによく似ている。携帯やデジカメで写真や動画を取る現代人は、皆ヴェルトフの子供たちなのかもしれない。