舞城王太郎『阿修羅ガール』

阿修羅ガール

阿修羅ガール

いまさらかもしれないけど、読んだので感想を。切れ切れに。

  • 新潮文庫になってたのかよ。ブックオフで見つけたから買っちゃったけど、かえって高くついた。でも表紙はこっちのほうがいいみたいだし、余白が多くて紙が柔らかいので読みやすい。
  • 行きずりでやってしまって鬱になる女子高生の下品な独白。それをしつこく書いていく男性作者の文章を読む、と言うことが悪趣味に思える。若い女性の独白は、男性作家が書けばいつでも悪趣味だ。
  • だが、その反動で開き直ってしまって、殺伐とした(ある程度現実に根ざした)女性の心象世界から目をそむけると、萌えオタクなってしまう。これも困ったものだ。作者は無理を知りつつも露悪的に、女性と男性(特にオタク)の問題に切り込んでいるのだ。いくらお前が何かに感動していても、すぐ隣には白けた他人がいるんだよと。
  • アイコの独白文が説教くさくて、なんだか作者さんなり切れてないなあ。
  • でもけっこう電波も出てるなあ。『絶望の世界』を思い出すよ。ていうか2ちゃん語出まくりだし。文章の流れが2ちゃんの各種名作コピペを思わせる。この小説が出たのは2003年だから、2ちゃんでコピペが量産されていた時代の名残を伝えるのかなあ。2ちゃんの歴史は知らないけど。VIPPERのぬるい祭りや警戒心ばかり強くて保守的な今の2ちゃんとは違う、ハードでアングラな雰囲気。
  • コピペっぽい文体なので、すらすらと流し読みしてしまう。電車の中で音楽を聴きながら読んでたんだけど、最果てのイマのBGMがなんか合ってしまう。掲示板とかフリークスの暴走とか。
  • 「森」の章は六十年ノ色彩のリズムに乗ってすっ飛ばして読んだ。マッチしすぎ。
  • 登場する固有名詞やパロディがとても生々しい。今の10代にわかるんだろうか。
  • キモオタの桜月淡雪(「同人誌作家みたいな名前だな」<みさくらなんこつ?)が最終的になんかおいしい位置に収まってしまっているのは、オタク読者への媚っぽい感じがした。下衆の勘繰りか知らんが。
  • 最後は綺麗にまとめすぎというか読者サービスし過ぎかも。お陰ですっきりするが。
  • 女性読者はどんな感想を持つんだろう。アイコという人格はかなりフィクション性が強い作り物の仮面だけど、それでもこの物語の主人公が若い女子だということの意味は大きいと思う。