島田雅彦『エトロフの恋』

エトロフの恋 (新潮文庫)

エトロフの恋 (新潮文庫)

 正直なところ、島田雅彦ってこんなにユルい小説を書くようになってしまったのか・・・という感想。ストーリーにしろ言葉にしろ、安っぽさが炸裂している。エトロフという特異な場所を選んだ設定の新奇さと、前二作と構成が結びついているという以外にはめぼしい魅力はない。酷い言い方になるが、料理のしすぎか文壇のぬるま湯に浸かりすぎか甘ったるいオペラの聴きすぎかで、毒と脂が抜けてしまったのではないか。現代の口語とかも取り入れられているけど、これも中途半端で弱々しい。とんがったところがない。くたびれたおっさんになるとこういう慰めてくれる話がよくなるのだろうか。
 まあ、三部作の前二作を読んでいないので的外れなところもあるのかもしれないが、それでも作者自身がいろんな順番で読むことを勧めてているし。あー、残りも買っちゃったんだけどすぐに読めるかな。