夏バテとかいろんなものをやり過ごすために

 何かに復讐できるわけでもないのに、ラノベばっかり読んでた。そろそろ印象が薄れてきたのもあるので記録だけしておく。


中村九郎『ロクメンダイス、』

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)

 リリカルな文体が心地よい。自分のリズムで、きちんと言葉を探しながら書いている感じがいい。ナイーブなユーモアを書ける貴重な作家さん。『アリフレロ』では奇妙な設定構築と活劇のほうに脱線していってしまったけど、こっちの路線で行ってほしい。Forestを思わせる展開だけど、こちらはいい意味でプリミティブでナイーブ。言葉に囚われるのはたいていは「言葉の檻」のテーマに行き着くパターンが多いんだけど、稀にこういう生産的な方向にいける人もいる。


笹本祐一『星のダンスを見においで』

 垢抜けないミリオタ小説。キャラがステレオタイプだし、メカと戦闘描写ばかり力入っているし、秋山瑞人にかなり開発されたとはいえ僕にはミリオタ属性はあまりないしで、構造が透けて見えてしまい目が滑った。ただしエピローグはなんだかんだ言ってもSFの醍醐味である、一気に時間を跳び越えて宙吊りにさせられる眩暈を味わった。これはやはりよい。


清水マリコ『ゼロヨンイチナナ』

ゼロヨンイチナナ (MF文庫J)

ゼロヨンイチナナ (MF文庫J)

 これはひどかった。いくら登場人物がみんな中学生くらいだからといっても、このクオリティの低さは言い訳にならない。ダメなエロゲーを読んでいるような違和感がずっとあった。女性作家の青春物なのになあ。イラストが無駄にいい。


麻生俊平『つばさ』

つばさ (MF文庫J)

つばさ (MF文庫J)

 60点くらい。ステレオタイプ多いけど、文章はなかなか軽快だし、なんだかんだ言って女の子ばかりで萌えるし、楽しく読めた。対象年齢低めなのでこれ以上は読めないが。


うえお久光悪魔のミカタ

悪魔のミカタ―魔法カメラ (電撃文庫)

悪魔のミカタ―魔法カメラ (電撃文庫)

 これは期待より面白かった。作者さんけっこう勉強好きの人っぽいし、切れ味も野心もある感じ。個々のシーンやフレーズは小ぶりな感じだけど。シリーズ化されているようで、ゆるくなっていなければいいが。田中ロミオを追い落とすくらい、もっとすっ飛ばして景気よくドカドカ詰め込んでいってほしい。


うえお久光悪魔のミカタ 2』

 相変わらずけっこう面白いけど、女の子が多すぎてまとまりが悪い。おいしいところだけ持っていったタカナシはいらなかったし、他にも関係ないのが2-3人。単なるヤラレ役かと思っていた樋口ががんばっていて好感が持てた。ナナナとの不釣合いなコンビをもっと見てみたかった、と思わせるほどに。究極の選択を突きつけられて引き延ばされる時間、反芻されるシーンというのはこの作者さんもうまいし、ラノベの得意とするところなのだろうか。樋口にとっては望みをかなえることが即物的なものから抽象的なものに途中で変わってていってしまった形で、それは悪魔が関わるという時点で必然ではあり、結果として堂島の役割が無意味なものになり(「失敗」と言っているのはかっこつけか)、でも体裁はハーレム型なので、アスカのような女の子と別の未来を夢見ることもできたはずの哀れ樋口は、これも悪魔のせいか、ひっそり退場というすわりの悪さ。