沙耶の唄 (60)

 マンガっぽい感じだった。展開が設定から導き出されるそのまんま過ぎて、こっちが翻弄されたり唸らされたり感情移入したりする暇がないってのは、やはりボリュームが少なくてシナリオが駆け足になっちゃってるからだろうか。沙耶と対話しながらその世界に引き込まれていく感じがしないのは、BN形式で沙耶の立ち絵との会話が少ないせいだろうか。ストーリー自体は割と普通なんだから、こんな正直な演出をせずに、こてこてのエロゲーっぽい作りにして、形式と内容との不協和音とかやって欲しかったかも。
 音楽と絵はなかなかよかった。先生の一枚絵の神経質な感じとか。沙耶の絵は色の使い方がうまくて綺麗なものが多くてよかった。立ち絵がおざなりなのは残念だったけど。臓物世界の背景画やどうでもいいカット絵がやたら力入っていて贅沢だった。
 やっぱりもっと沙耶との二人の時間をたくさん描いてほしかったなあ。エロゲーを読み物としてというよりは、どっぷりと浸かるためのものとしてプレイしている気持ち悪いユーザーなんで(主人公の音声は早々に切りました)、こんなに簡潔な描き方では物足りない。グロいところはもっとグロく、明るいところはもっと明るく、思い出になるようなエピソードをもっと積み重ねて欲しかった。っていっても単にボリュームを増やせばいい話でもないんだろうなあ。期待しすぎていた自分が悪いのだろうけど、もう沙耶から目をそらせなくなるような、もっと中毒的な作品にして欲しかった。世界には沙耶しか見るに値するものがないのなら、もうこれでもかこれでもかというくらいに沙耶のCGばかり狂ったようにたくさん描いて欲しかった。