いつか、届く、あの空に。 (65)


 プレイ日記:http://d.hatena.ne.jp/daktil/20080310
 へたに北欧神話とか、十二宮の星座とか、家のしきたりとかそういう骨格を持った物語だから、力んじゃっている文体が中途半端に見える。神樹の館のような抑制の効いた文章なら何とかなったかもしれないけど、これでは負けてしまっている。泣かせ所でもかっこつけ所でも、文章のバラバラな感じが残念だった。神話は神話らしく、韻文で書かれていれば理想的だった。話が壮大なってしまうだけになおさら。こんなときには結局「形式」が後に残ってしまう。ところどころ素直に読めたところもあったけど、全体としては悪い意味でFate的な感じ。「形式」としてよかったのは、絵と音楽。音楽では学校の曲、空明の里の曲、此芽の曲、「透色の憧憬」がよかった。後半ではこういう綺麗な曲が減ってしまった。
 話として意外な感じがしたのは傘。「いまさら謝るなよ」的な場面には、正反対の嫌な感じのに日常(仕事)で出くわすことがあるだけに(「やる気」や「情念」で押しつぶす営業の世界)、そういう不条理な犠牲と自己満足に異を唱える傘の、「人間の尊厳」的な立場からの制裁には、ねじけた共感を覚えてしまったり。そしてまた、「感情移入」が重要な恋愛シナリオとしてはいびつな展開で、エッチシーンの最中になってやっとヒロインの内面が少し描かれる、というのもちょっとよかった。おっぱい担当で北都南さんというのもあるが。
 ストーリーは面白かったけど、説明しすぎなところが多かったのがもったいなかった。ふたみにしても此芽にしても静かにしても、もっと省略によって落ち着いた演出ができただろうに。考察はここの人ががんばっておられた:http://nikking.pon-kotsu.com/?eid=477178
 あと北欧神話ってどうなんだろう。大昔にヴァイキングの入門書やらスノッリ・ストゥルルソンやらを少しだけ読んだけど、叙情に乏しくていまいち魅力がよく分からなかった。よくわからない世界だけに、また誰かにエロゲーで挑戦して欲しいとは思う。
 テキストの行儀悪さを、熱いストーリーと綺麗な音楽と絵が救っている作品であり、それを許せるのがエロゲーの懐の深さだ、ということで。