明日の君と逢うために:里佳

 一ヒロインのルートとしてはシナリオが破綻している印象。里佳のテーマはりんや咲との物語に書き尽くされてしまっていて、その間主人公は聞き手あるいは傍観者に過ぎない。中に入っていけなかったのに、りんや咲との物語が終わったらいきなりくっついてしまう。でもりんを送り出してこの作品を閉じるという意味では、作品全体のシナリオとしては構造的にきちんと成り立っているように見える。一つの世界が終わって別の世界が始まるのタイミングというのは奇妙に唐突だったりするもので、覚悟しだいで外面的にも内面的にもあっさりと切り替わってしまう。それが神様がいないということなのかもしれないけど。
 里佳はキャラデザが君のぞのの水月を思い出させて、面倒くさい人情キャラシナリオなんだろうなあと少し勝手な警戒をしていたけど、一色ヒカルさんの緩急自在の名演もあってか、女性的なやわらかさも感じられるヒロインになっていてよかった。飲んで酔っ払っては道端で寝込んだりしていたのは、自分を省みずに一生懸命働いていたからで、それは島にはまだ神様がいるという安心からできた無茶なのだろうと思うとほほえましい。神様を見送って過去にもけじめをつけてしまってからの、寂しさを抱えた姿は確かに綺麗に見える。それから若い主人公にころっと転ぶのは、笑えるけど幸せなことなのだろう。