then-d編『恋愛ゲーム総合論集2』とか

 毎度のごとく、コミケが終わったらすぐに読んで簡単に感想を。

  • Rewrite各論:Keyのゲームはクドわふたーを除くと智代アフターを最後に脱落してしまったので未プレイ(クドわふたーに入っていた体験版だけ)。ネタバレを含む考察なのでちょっともったいなくはあったけど、この先もプレイするか分からないので読んでしまって、ずいぶん神話的な構造が強調されているんだなという印象を持った。未プレイゆえ、瀧川さんのが一番面白く読めた。
  • wry dread(星の王子くん):あえて書くと、説明でなく規定する戦前の評論のようなタイプの文章で、個人的には非常に読みにくかった。自分はサン=テグジュペリの小説のよさがよく分からない人間なのとも関係あるのかな。
  • 遠山悠夏(天使の羽根を踏まないでっ):けっこうな力作だった。新約聖書との比較が多くて、全然エロゲー批評らしくない。というか美少女の可愛さが全然論じられてないのに面白いとは…。とはいえ、いくら設定は面白く仕掛けられていても、メッセージの提示の仕方がくさくて、掛け合いはちょっと寒い、というのが朱門優作品の個人的な評価なのはやはり変えられない。絵や音楽や声とのシナジーを別とすると、その辺の短所があまり目立たないラノベのほうが読後感がいいのも確か(エロゲーだと短所もシナジー効果で増幅されるし)。自分はあまり高く評価できなかった作品である以上、これほど自信と熱をもって論じられている文章があるのは好ましく思った。この作品に性的な香りがあまり感じられないのは、ここまで聖書に準拠した作品であるのならば正解なのかもしれない。
  • 川崎水姫(恋ではなく):欲望の対象が僕のようにヒロインではなく、カップリングに向いているようで女性的な(といっていいのか)感じがする。伏線回収の話では、自分はどちらかといえば伏線は放置されたほうが好きで(あるいは頭が鈍いので自分では気づかないか気づこうとしないことが多い)、最果てのイマのように詰め込んだり抜け落ちたりして穴が開いていたり、あるいはキラ☆キラのように通り過ぎたら振り返らないというのが風通しがよくて居心地よく感じる。好みの問題か。
  • then-d(キサラギGOLD☆STAR):未プレイながら、麻枝准と関連付けるこの文章のおかげで、はつゆきさくらプレイへのモチベーションがまた少し上がった(もともと気になるヒロインがいる)。とはいえ、新島夕のインタビューを見ると、自分はカリスマライターではないとわざわざ断っていたりして、麻枝テキストの文体的な魅力を期待するのは無理かなという気がする。主題やシナリオ構成ではやはり、CLANNAD以降の近作は切れ味が落ちていると感じているので、麻枝後の新たな作家として期待できるのなら楽しみだけど。体験版をやったほうがいいのかな。
  • 遅れてきた大物(太陽の子):ポスト葉鍵世代(というと語弊があるが)で人気が高いという以外にあまり共通項がないように思っていた作家3人が、トラウマという視点でうまくくれるのが興味深い。
  • もりやん(「恋愛ゲーム」の周縁):自分が実際にプレイするかどうかはともかく、読んで面白いゲーム紹介。みさくらなんこつの新作(ふたなりアクション?)もこんな心構えでやればいいのだろうか。
  • 雪駄(二次創作という解釈):二次創作はおそらく広大な領域なのだろうけど、葉鍵板を除くと個人的にはあまり触れる機会がないので、こうした本の中でよい作品がきちんと分析・紹介されるとありがたい。Renaissance、やったなあ。でもあの絵柄でKanonのキャラクターは受け入れられるか分からない。

 then-dさんの音頭取りありきで続いたようなシリーズだったので、無理がたたっていったんお休みとなるのは残念だけど仕方ない。then-dさんの論考自身の質の高さが、他の寄稿者の方たちにもよい緊張感とモチベーションを与えていたように思えたシリーズだった。今後はきちんと睡眠もとりながらエロゲーをやって、面白い文章を発表されるのを楽しみにしています。イラストや編集の方々のおかげもあり毎回楽しませていただきました、お疲れ様でした。


 あとはKaned Fools「しえいのそんなにいる」を読んだ。可愛いリリィがいっぱいでAも満足のボリューム。エリシアもよかった…。
 瞬旭のティルヒアも。続きが楽しみな幕末期のスチームパンク。やはりちょっと暗くてさびしい話になることを期待。
 他のものの感想はまたあとで。