不死鬼譚きゅうこん 千年少女 (45)

 すっかり頭がいかれてしまったようで、非18禁作品とは分かっていながらも、濡れ場シーンでブラックアウトして事後描写だけされると、出来るはずだったセックスを主人公に奪われたような、寝取られ感とでもいえるような感覚を味わって少し悔しい。非18禁的寝取られ?インターフェイス的にもストーリー的にも絵的にも、エッチシーンはあったほうが自然に思われた。といっても、全体的に器用に小さくまとまっていて、特に切れ味も引っかかりも過剰性もない作品だったので、あってもあまり印象は変わらなかったか。恋愛物語としてみても、サブヒロイン(美月)とメインヒロイン(楓)の配置がキャラの濃さと感覚的にずれていたので不完全燃焼だった。
 情念を食料にするという設定は、作品を料理に例える発想と同じで、それだけで終わってしまうのならばやや品がない、といったら逆に「食べることを冒瀆している」というお叱りを受けることになるのかもしれないけど、それでもやはり自分は食べるということは一段下に置いておきたい価値観の人間なので、設定を設定以上のものとして受け取れず、淡白なラノベを読んだ程度の印象しか残らず。短編なのだから一点突破の突き抜けたものがいいのか、それとも小さな工芸品のようにサイズの感覚を楽しめるような落ち着いたものがいいのか。自分は病的な過剰姓や欠落がないとなかなか作品に入っていけないダメ人間なので、前者。(その点、この作品と同時に買ったKiss+100は対照的で、一点突破の過剰なテクストを書くライターさんの低価格作品で、序盤から歪な雰囲気に引き込まれた。)もともと内容自体にはあまり期待せずにとある事情でやることになった作品だったけど、案の定テンションの低い感想になってしまった。