さくらシンクロニシティ (55)

 なんだか作品を出すごとにクオリティが下がってきているホワイトソフトだが、今回も手堅く下がっていて期待通りだったorz。一部いい素材もあるのだけど、至る所で緊張感に欠けた演出が顔を出すので、没入感を維持するのが難しい。立ち絵とセリフが合っていない瞬間が多いのは、表情の種類が少なくて汎用性が低いものというだけではなく、立ち絵で表現しなくてもいいようなところでも表示したりする貧乏くささのせいだったりもしてさみしい。立ち絵を前後左右に動かす演出も、(喩えが古いが)タイプムーンレベルでもあまり褒められたものでないのに、このメーカーはいつまでも子供向けの人形劇のようなプリミティブなレベルで、脱力する。猫撫ディストーションのときはメタ的な意図に基づく演出として納得することもできたんだけど……。一枚絵もテキストと食い違っていたりして、とりあえずある素材で間に合わせてみた感が強い。
 シナリオも今回はいいところがさらに少なくなっていたような気がする。「運命君」のときは、全体としてみるとかなり残念だけど、梨鈴という突出したヒロインがいたからまだ救われたところがあった。今回はりせが期待のヒロインだったのだが、結局は絵と声だけで、いいところはほとんどなかった。りせに限らず、ヒロインたちをとりまく事件、というか設定がダイジェスト的に明らかにされていっただけで、彼女たちの個性みたいなのはほとんど感じられなかった。感じられたとしてもそれは絵と声によるもので、しかも絵の品質にはばらつきがあって困った。


 まあ愚痴はこのくらいにして、少しはよいところも記憶しておきたい。
 といっても、体験版をやらずに発売を楽しみにしていた自分としては、一番テンションが高かったのは予約特典の色紙を眺めていたときだった。この色紙、実は商品本体とは別売りの扱いだったらしく、公式サイトでは「プレゼント」と書いてあるのになぜか1000円で買ったことになっていてアレっと思ったのだが(ソフマップの人が値引きを忘れたのかも)、それはみみっちい話なので措くとして、けっこうできがよい。りせが神秘的な微笑みを浮かべてこちらを見ていて、しかも桜色の色調の中できれいなおっぱいが丸出しになっているので、結果的に未知の物語の神秘的なおっぱいがこちらに微笑んでいるような格好になっていて、しかもその微笑みは桜色で、丸出しである。スフィンクス。おっぱいと微笑みの桜色のシンクロニシティ……。作品自体をやってみると、りせには設定以外の部分、個性というか性格のようなものに少しも不思議なところや神秘的なところがなく、それは主人公が平凡だから彼とシンクロしている双子の妹も平凡だとういう嬉しくない設定の整合性なのかと納得するしかなさそうなのだが、りせの表情とか笑顔はやっぱりよかった。期待していたシナリオは肩透かしだったけど、そこだけは救いだった。ヒロインたちとのシンクロニシティは、言葉や意味ではなく目とか耳の感覚レベルでするものだという教訓か。