Lovesick puppies (55)

 ファンタジー要素がないゲームはやはりつらい。犬と戯れるように可愛い女の子と戯れるのを楽しむ病的なゲームをタイトルから期待していたところ、単に可愛い女の子に健全な説教をして保護者になってやるという無自覚に病的なゲームで、いちいちヒロインに「お前はそれでいいのか」とか「お前は癒されているのか」とか「泣いてもいいんだぞ」とか鬱陶しい絡み方をする主人公が邪魔であまり楽しめなかった。ただしそんな主人公にでも懐いてしまう女の子たちの残念な無防備さに背徳的な魅力がないわけでもないのも厄介なところで、特に一番主人公が保護者的な立ち回りをするまるなシナリオは、まるっこいまるなの必死ぶりが可愛くてよかった。目当てのソーニャは、すがすがしいほどにロシアネタがまったくなくて空振りだったが、主人公に惚れるのが唐突過ぎて気持ち悪いという一点を除けば、鬱陶しい主人公に対しても超然としていられる気持ちのよい女の子で素晴らしかった。
 ファンタジー要素がないゲームはつらい。といっても本作は声と立ち絵の水準が高くて非日常感があるとも言える。想像力の翼を伸ばして日常から逃れる必要がない、極限状況に追い詰められて達成感を得る必要がない、(自分自身には問題は生じない相談係的に)しかるべき気遣いを見せてきちんと話せばすべてが丸く収まってうまく回ってくれる退屈な世界の場合(テキストも鈍重で退屈だった)、その日常でどれほど可愛い見た目や可愛い声の女の子の好意が自分に向けられているかが残るばかり。その箱庭感を犬を飼う感覚と比べてもいいのだろうか。