声の魔法(エロゲーソング雑感)

 ゲームの方がなかなか進まないので代わりになんとなく。疲れた仕事帰りとかに聴いている曲について。
 クドわふたーのone's future(OP曲)とかFragment Kud.verとか、しゅきしゅきだいしゅきのしゅきしゅきちゅ〜いほう!(OP曲)とか、ロリソングにいい曲が多い気がするのは何か理由があるのだろうかと思っていたところ、あるようなないような。



 Fragmentを例に取ると、この曲の魅力は、メロディ(美しく感傷的)、キャラ声(ロリ)、中の人の非キャラ声(お姉さん)、歌詞(一人称・僕)、キャラ設定(一生懸命なロリ)といういくつかの要素がせめぎあっている緊張感がある。という理屈をこねる前に、まずはじめの「うーいうーいしい」の歌い方が天才的過ぎて満足してしまうところ。作詞は魁氏だそうだが、主人公「僕」がクドに語りかけている体の歌をクドに歌わせているところからしてずれていて、自分とクドの関係を「初々しい」と形容する言葉の選択が不適切なのに(普通は他人を評するときに使う)、それを歌うクドが完全に音程をはずしてしまっていてそのこと自体が初々しさを表現していることで、マイナスかけるマイナスがプラスになるような、ゲーム自体の詩学をも象徴するような荒業が一言で歌い上げられていて完敗。(ちなみにone's futureの白眉は、2番の「ちゅっとちゅっとキスした」の「た」だろう。)歌の後半では、クドが一生懸命歌って盛り上がっていって、鈴田さんやストルガツカヤの声も聞こえてきそうな気がして(鈴田ボイス版もある)、物語性を感じる。
 歌は自己表現の手段であるから、自分をすべてさらけ出すのがよいとなって、とにかく声を張り上げてしまう歌手、いろんな声を出していろんな歌い方をしてしまう歌手がいるかもしれないが、僕は声自体の「キャラクター性」が好みに合うかどうか(結局これが一番重要なのだが)、そしてそのキャラの魅力を追求して磨き上げていっているかが重要に思える。だからキャラソンが軽かったり薄かったりして、作中よりもキャラが遠く感じてしまうような歌は残念だ。
 また例を挙げると、好きなキャラソンとして、「セイレムの魔女たち」のED曲「そっとキスして」がある(一番好きなのはソフィ版だがジュリア版だけあった:http://www.nicovideo.jp/watch/sm3405229)。同じ歌をルートごとにそれぞれのヒロインが歌うのだが、壮絶な物語の後のハッピーエンドで流れる曲としてかなり幸福感を味わえる。あと、全員合唱のED曲「大好きダーリン」という曲があるが、これも同様の理由により名曲で(http://www.nicovideo.jp/watch/sm3405240)、ただでさえ脳が溶け気味になるのに、合唱で「浮気しちゃだめよ」とか言われると完敗。
 他にいびつな名曲としては、Hello,worldの奈都美のED曲「真珠のうた」を挙げることができる。真珠の殻を開けてほしいとか、優しく包んでとか、弾け飛ぶとか、歌詞はまじめに読むとかなり卑猥なのだが、榊原ゆいさんのエロかわいいキャラ声と、長い物語の最後を奈都美というヒロインと迎えた感慨に押し流されて完敗。ちなみに別の意味でやられたのは、先日歌詞をぐぐってみたら、長年中国語だと思っていたフレーズが英語だったことだ。
 I'veの歌では、一時代を築いた電波ソングは何だか最近はあまり聞かなくなってしまい、一番心地よいのは詩月カオリさん(とKotokoさん)のSave your heartだったりする。優しくてかわいらしい、物語性を感じられる声と歌だ。桃井はるこさんの歌にもそういうものを感じることがある。
 最後にもう一曲、昔の曲を。魂のルフラン綾波レイ版だ。あまり説明しても仕方ないが、途中で挿入される、歌詞をセリフみたいに読む部分のかっこ悪さに残念がりつつ、気が狂ったように何度も聞いていた。初めて聞いたのは、ネットの同人小説でクライマックスシーンになったらこの曲が流れるように設定されていた天晴れなページでだったかもしれない。
 こうして振り返ってみると、自分は歌の技術的な部分よりも呪術的・物語的な部分にはまりたがっているのが分かる(単に音楽の素人なのでメロディとかで語れないからというだけなのかもしれないが)。浸れる歌といっても、そんなもの少なくとも今までは不意打ちのような形でしか出会ってないから、どうしたらいいのか分からない。でも不意打ちが一番いい出会い方なんだろうな。あと、物語とはいっても、声には物理的な基盤があるので安心な気もする。それにしても歌について書くのは、褒めても逆効果だからかやはり難しい。